XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ポケットMLA

扱いも簡単で手軽に持ち運べるMLA

 以前、伸縮ホイップMLAを作ったことがある。その際伸縮ホイップを固定するのに悩み、結局ケースに入れて固定した。そのため結構大きくなってしまい、携帯に不便だった。もっと小さく纏めることができないかいろいろ考えていたのだが、根本部分で折り曲げることができる伸縮ホイップを見つけた。これならば平らな板の上に取り付けても扇状に広げることがことができる。そこでポケットに入るくらいコンパクトなMLAを作ってみた。
 伸縮ホイップは伸ばすと65cm程になる。これを二辺としてホイップの先端同士を銅線で結ぶことで周囲が2mほどのトライアングルを形作ることができる。これまでの実験からこのループに260pFのポリバリコンを接続すれば7MHz以上のバンドで整合が得られそうである。
 ホイップの先端部に導線を接続する方法だが、前回はミノムシクリップを使った。簡単な方法だったが、いちいち取り外したり付けたりするのは面倒である。ホイップの素材がステンレスで作られているのでハンダ付けは難しい。そこで、先端部を同軸ケーブルの編組で包んでしまい、その上から熱収縮チューブを重ねて固定した。その編組に銅線をハンダ付けする方法を試みた。チューブで押さえているだけなので強い力には弱いのだが、通常の使用には耐えられる接続をすることができた。
 給電部はトロイドコアを介したリンクコイルを使った。SWRを下げるために、このコイルの巻き数は周波数帯によって変える必要があるが、主に使う低い周波数用で作った。FT37-#43のコアを使い、6ターンである。この巻き数で7MHzから14MHzまではSWRはほぼ1に近い値が得られた。より高い周波数で使うなら巻き数を減らす必要がる。<製作記事>
 実際の運用ではこのMLAをどのように設置するかが問題となる。これまでアルミワイヤー等を使ったMLAでは上から吊す方法が多かった。このMLAの場合、基台が下にあるのでこの基台を机の上などに置けるようにすれば設置が簡単である。そこで、脚を付けることにした。手元にミニ三脚があったので、これを取り付けるナットを基台に接着剤で貼り付けた。持ち運びをするときにはを三脚を外しておけばコンパクトになる。
 掌に載るサイズのMLAに纏まった。設営、撤収も容易である。両側の伸縮ホイップを伸展すれば完了する。リグに接続して受信ノイズが最大になるようキャパシタを調整すれば運用できる状態になる。コンパクトなアンテナであり、効率はよくないがロケーションや伝播コンディションに恵まれれば、そこそこ交信はできるだろう。
 後日、7MHzで新潟市の移動局と交信でき、RSTは449だった。弱いながらも電波は飛んでくれているようである。
 MLAはループと同一平面の向きに指向性があると言われている。実際、ループの向きを変えると受信強度が大きく変わる。運用しながら相手局からの信号が強くなるようループを回すのはこのポケットMLAならば簡単にできる。また、この指向性を利用して近隣の機器からのノイズから逃れるのも容易だ。
 QRPと小さな設備で運用したとき、たとえ1局しか交信ができなくても「こんな設備でよく電波が飛んでくれた」と満足感が得られる。これもアマチュア無線の一つの楽しみ方と言えるだろう。