XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

程度問題?

ショップに状況を報告したら返事をいただいた。

 樹脂素材は熱により変成し柔らかくなったり融けてしまうことがある。しかし取り扱いやすく優れた絶縁性があるので電気部品などにもさまざまに使われている。
 アクリル板もその一種だが、工作のし易さから私も利用している。熱による変形は活用しやすい反面、状況によっては困った場面もある。アクリル板にリベットでラグ板をかしめていて何かの都合でその近くにホットガンの風を当てなくてはならない場合、リベットに熱が伝わってしまうとかしめが緩んでしまうのだ。同様に、アクリル板にブラインドリベットでかしめたラグ板にハンダ付けする場合も注意が必要だ。ハンダこてで加熱しすぎると緩んでしまうことがある。しかし、こうした性質を理解した上でホットガンの風の当て方を工夫したり、ハンダ付けの際の手際を工夫することで樹脂素材の持つこの弱点をカバーすることができる。

 先日ショップから購入したステレオプラグを取り付けたときのことである。いつものようにリード線をハンダ付けして動作確認をしたら働かない。調べてみるとプラグのチップ部への信号が出ていないことが判明、導通不良だった。そこで 新しいプラグに交換することにして、取り付ける前にチップ、リング、グラウンドの各接続端子との導通を確認、リード線をハンダ付けした。しかし、またしても動作せず、チップ部の導通不良だった。仕方なく3個目のプラグに交換したのだが、同様な結果で動作しなかった。同じ不具合が3回も続くというのは部品の不具合ではと考え、カスハラにならないよう注意してショップに状況を報告した。
 ショップからその返事が来たのだが、「熱による樹脂の溶融が見られた。センターピンとラグ板が密着するように樹脂で固定されているが、ハンダ付けの際の熱で樹脂が溶融し、その後の硬化でピンとラグ板の間に樹脂が入り込み接触不良を起こすことがある。交換対応としたい」とのことだった。新しいプラグが3本同梱されていた。
 樹脂の性質から言えば熱により変性するのは当然なのだが、ハンダ付けする用途で使われる部品でこのようなことが起きるとは意外だった。ショップからの注意として「ハンダ付けは15W~20W程度のはんだごてで素早くお願いします」とのこと、私が熱を加えすぎたのが不具合の原因だったようだ。

 その昔、電気部品の絶縁にはセラミックなど鉱物質のものが使われていた。熱による変性を心配することなく使うことができた。しかし、最近ではほぼ合成樹脂が絶縁材として使われている。耐熱性の高いものが多いと思われるが、熱による変成は避けられない。過度の加熱は避けなければならないのだ。今回のプラグのチップピンでの導通不良はその注意を怠ったために起きてしまったようだ。過度に熱した覚えはないのだが、結果的に樹脂部分が溶融し、本来導通しなければならない部分に入り込んでしまったようだ。
 何事も程度問題。耐熱性があるだろうと過信することなく、どんな樹脂が使われているかを確かめながらハンダ付けをしなければならないという教訓になった出来事だった。