XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

パドル

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簡単工作パドル

 モールス符号を生成するために使うのが電鍵でありパドルである。モールス符号は1と0の組み合わせのデジタル信号であり、1にあたる部分で電波を出したり光を出したり音をだしたりし、0の部分ではそれらを出さないことで符号を構成している。つまり1か0かを切り替えることで符号となる。この切り替えに使うのが電鍵であり、パドルなのだが要するに切り替え器・開閉器・スイッチである。
 この切り替えに時間という要素が加わることで、符号が出来上がるので、タイミングよくこれを操作しなくてはならない。そのため電鍵やパドルはスイッチという単純な機能でありながら、手動での操作が確実にタイミングよくできるようにさまざまな工夫が込められている。たくさんの機種が市販されていて、どれも大変に高価である。また、単純な機能ゆえに自作をする人も多い。
 市販されているものは機能美ということから無線室に飾っておくという役割を持たせた装飾的なものもあるが、操作性、つまり打ち心地を追求したものがほとんどである。接点を閉じるときの反発力、その硬さ、強さ、動作の滑らかさ、接点の間隔、また、一つの動作から次の動作に移るときのストロークの長さ等々、感覚として感じるしかないような微妙な部分を追い求めている。
 流れるような、聞きほれるモールス符号を打つためには、こうした高機能な電鍵やパドルが好ましいのだろうが、通信としてのモールス符号を生成するには、極端に言えば親指と人差し指に導線を巻き付け、断続を繰り返すことでも通信することができる。

 写真はもう数十年間使ってきた市販のパドルと、3.5mmφのステレオプラグで作ったパドルである。自作のものはプラグに少し手を加えて短点と長点が出せるように工夫した。チップとリングの端子にラグ版をハンダ付けし、ホットメルトで固定してレバー操作のフィーリングを調整したものである。こんな単純なものでもDitとDahの2つのスイッチの役目を果たしている。接点の接触抵抗や動作の不安定さは避けられないのだが、自分の操作しやすいように調整をすることでとりあえず使えるレベルまで追い込むことができた。
 昔は送信真空管の陰極電流を直接、電鍵で断続することが行われていたようだが、今ではトランジスタキーイングがほとんどだ。パドルも同様である。デジタル回路のエレクトリックキーヤーは補正回路が組み込まれている。電鍵やパドルのスイッチに多少の接触抵抗変化があっても補ってくれる。このような簡単なスイッチでも符号乱れの原因となるチャタリングを起こす心配はないようだ。100円未満で作れる簡易パドルであり、人様に使ってもらうようなものではないが自分で使うには便利だと思う。

 モールス符号は、人間が直接生成し解読することができるデジタル信号であるという単純さゆえに、こうした他愛のない工作も楽しむことができる。数万円もするパドルや電鍵、また自作の簡易パドルなどさまざまな機器からモールス符号が生成され、お空を飛び交っている。モノづくりも含めてモールス通信を世界遺産として残しておきたいものである。