XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

エマージェンシー パドル

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エマージェンシー パドル

海外のフォーラムで、簡易パドルが話題になっていた。タクトスイッチを3.5mmφのプラグに直接取り付けたものである。大変コンパクトに作れるので、アクセサリーのようにして紐を付けておけば、邪魔にならないし、忘れることがないというものである。
ここで言うパドルとは、エレクトリックキーヤーという電子回路で自動的にモールス符号を生成するために、モールス符号を構成する短点(Dit)と長点(Dah)を送出させるためのスイッチである。タイミングよく長点、短点、スペースを送り出すために、このスイッチを指で挟むように操作する。一方のスイッチをオンにすると長点が送出され、他方をオンにすると短点を送出する。
簡単なスイッチなのだが、エレクトリックキーヤーでは、このパドルがないとモールス符号を送り出すことが難しい。移動運用などの際、パドルを忘れてしまうと、大変なことになる。フォーラムでは、そのような際の非常用パドルとして、このパドルを考えたのだとのことであった。
触発されて、手持ちの部品で作ってみた。確かにパドルとしての機能は持っている。しかし、使いづらい。タクトスイッチが思いの外、堅いのである。普段、何気なく押しボタンスイッチとして使っているタクトスイッチではあるが、パドルとして高速でオン-オフを繰り返す操作には向いていないと思った。軽く触れただけで操作できるものが望ましい。

 

私がモールス符号での交信を始めた頃である。まだ、真空管式の送信機が使われていて、エレクトリックキーヤーが話題になり始めていた。そのころCQ誌のコラムに載った記事があった。今回のフォーラムで話題になっていたと同じような発想である。パドルを忘れた時の非常用としてプラグに細工をしてパドルを作ったという記事である。そのころは6.3mmφのプラグが主流で、そのプラグに金属片を取り付けてパドルにしたというものである。エレクトロキーヤー自体がCRの時定数を利用したものやロジックICを組み合わせたものなどが最先端の技術であった頃、こんな簡単な細工でモールス符号が出せるという記事に大変興味をそそられ、覚えていたのだ。

 

今使っているのはほとんど3.5mmφのプラグである。その端子にリード線を取り付け、パドルの機能を持たせた。リード線の付加だけであるので、そのままカバーを被せることもできる。カバーをしてしまえば、線のついていないプラグに見える。この簡単な工作で、軽いタッチのパドルができあがった。指で軽く触れるだけでモールス符号を送出できる。エマージェンシーパドルの誕生である。

しかし、あまりに小さいパドルなので、どこかに紛れ込んでしまうおそれがある。やはり、紐を付けてアクセサリーのようにしておかなくてはいけないようだ。