XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

電鍵に取り付けるメッセージ送出器

ガジェットからメッセージ送出

 アマチュア無線和文電信は平文で一文字ずつ符号を送って交信することが多い。時候の挨拶から始まり、信号強度やその局の所在地、自己紹介などその時の気分でさまざまな話題について送りあう。そのため交信時間が長くなってしまう。「ではまたおあいしましょう」と交信が終わるのに1時間近くかかることもある。ほとんどの局が電鍵を使っていらっしゃるようで、手で操作するので短点、長点、間隔の微妙な長さの違いで感情までも伝わってくるように感じる。モールス符号やスペースのほんの微かな違いに個性が表れて、一文字一文字の会話を楽しむという風情である。
 電鍵を使っての交信は楽しいのだが、時として定型文を送るときなど器械に頼ってもいいかなという気分になる。交信をしながらもちょっと一息入れたいのだ。そんなときに使える電鍵に取り付けるメッセージ送出器を作ることにした。
 趣向としてはこれまでやってきた小さなチップATTiny402を使うプロジェクトである。
 このチップは8ピンの小指の先ほどの大きさである。電源のVccとGnd、そしてプログラム書き込み(UPDI)用の3つのピン以外をプログラムでの機能として使える。その内の1つは出力として使い、残りの4つのピンをメッセージ選択として使うこととする。ボタン一つで所定のメッセージを送りたいのだ。電鍵による手送り送信に割り込ませる形でメッセージを自動送信する使い方である。
 全てのピンを使ってしまうので、機能としてパドルを使ってメッセージを書き込むようなことは出来ない。スケッチの中にメッセージを組み込むことにする。同様に送出スピードの設定も無理なので予めスケッチに書き込んでおく。使う人専用の、汎用性のない仕組みになる。
 メッセージはスケッチの中に文字列として書き込む。つまり、格納されているメッセージを一文字ずつ読み出してモールス符号に変換する仕組みだ。そのための変換データをスケッチに入れておく。通常使われるのはア~ンまでのカナと数字0~9、若干の符号(スラッシュや句点、疑問符、段落、括弧など)と想定して変換データとした。しかし、使っているうちに交信の中で欧文が必要な場面があることに気づきアルファベットとホレや終了の記号も入れることにした。送出スピードは基準になる短点の長さを指定する。概ね20WPM相当の値として120(ms)を設定してある。速くしたい場合はこの値を小さくし、ゆっくりにしたい場合は大きくすることで設定を変更できる。
 モールス符号の送出中に中断したい場合も考えられる。ボタンを押せば送出が止まるような仕組みを考えたのだが、チップの割り込み機能が制限されていて実現できなかった。うまい対処方法があればご教示願いたい。電源スイッチを組み込む余裕がないので3分間操作がない場合にはスリープに入るようにした。目覚めさせるには0Pin(物理ピン2)を押す。このピンには①のメッセージが割り当てられるので交信で頻繁に使う「了解しました」のようなメッセージを入れておけば良いだろう。このボタンを押して「了解しました」を送信し、その後電鍵の操作で電文を送る。目覚めさせておけば残りのメッセージも選択できる。

 出力にはデジタルトランジスタを噛ませてキーイング回路とした。電鍵と並列にこの器械を接続する。この出力はスイッチ動作なのでキーイング以外にもLEDを点灯させたり、ブザーを付けたりいろいろ使い方ができる。CR2032の電池とDIP変換基板、それにタクトスイッチだけなのでボトルキャップに中に組み込んだ。ボトルキャップガジェットの仲間入りである。

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