以前にもモールス符号の習得について書いたのだが、耳が符号のリズムに慣れるのがとても大事だと思う。受信練習を繰り返し少しずつ符号に慣れていくのが一般的だ。だが、送信練習で自分で符号を出しながらそれを聞くという練習も有効だと思う。ところが電鍵を使ってモールス符号を打つということには熟練が必要なのだ。デジタルではあってもモールス符号の送受信は感覚的に扱うため、しっかりとモールス符号が身に付いていないと打鍵できるものではない。モールス符号を覚えるための送信練習ではエレキーの力を借りた方がよい。短点、長点、スペースの長さを機械的に生成してくれるので少し慣れれば比較的きれいな符号で練習することができる。
この目的のエレキーは基本的な機能だけあればよい。サイドトーンがあること。速度調整ができること。打ちやすいようにパドルの入力にメモリーがあること。スクイーズ機能もあるとよいかもしれない。このような仕様で簡単なエレキーを作ってみた。
実は前回のブログで紹介した生成AIを使った製作である。爪の先ほどの小さな8ピンマイコンATtiny202にAruduinoでスケッチと呼ぶプログラムを書き込んだ。マイコンにどういう動作をするのかというプログラムを書き込み、希望する機能を搭載する。そしてその端子にLED、ピエゾ素子の出力デバイスを接続し、入力端子には押しボタンを繋ぐ。また、短点と長点を生成させるためのパドルを接続するためのステレオジャックを付ける。電源は3Vのボタン電池CR2032を使った。小さくまとめるためにケースは使わず、とピエゾ素子と電池の間にマイコン周りの回路をサンドイッチのように挟み込んだ。手の中に握れてしまうほどコンパクトなキーヤーである。
製作記事 XRQ技研ホームページ
スイッチを入れるとオープニングメッセージで”R"が音のみで出力される。本来エレキーはモールス符号を送信するためのものなのだが、練習用という意味でキーイング回路の変わりにLEDが点灯するようにした。モールス符号の速度はゆっくりなほどわかりやすいかというとそうとも言えない。音の塊として認識するのである程度の早さが必要なのだ。キーヤーの早さはボタンを押す毎に速くなる。初期値は毎分20字程度にしてあるが、ボタンを押すと30WPMまで速くなり、また10WPMに戻って徐々に速くすることができる。受信練習で慣れた早さにするのが良いだろう。(速度設定ではLEDは点灯しない)パドル操作でモールス符号を生成すると、音と光りで出力される。自動的に短点や長点、その間のスペースを生成してくれるので符号としてのリズムを掴みやすいと思う。符号を聞いて文字を想起するという受信練習と、文字を想起しながら符号を聞く送信練習を織り交ぜながらモールス符号習得を目指す。モールス符号は符号を音の塊として捉え文字がすぐに想起することで習得になる。トツーだからAなのではなく、トツーはAなのだ。
簡単にできるエレキーだが、アイコンの書き込みなどハードルが高い方もいらっしゃるだろう。連絡をいただければ書き込み済みのマイコンをおわけすることも可能である。奥が深い電信の世界に多くの方が来てくださることを願っている。