XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

6m AND down

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昨年のものですが、参加証

 波長が6mよりも短い周波数、すなわち50MHzよりも高い周波数を使った交信を競うコンテスト、6m AND downが7月3日15:00から4日21:00にかけて行われた。例年ならばさまざまな趣向を凝らして大いに盛り上がるコンテストなのだが、今回は状況が違った。ここ数日、線状降水帯が本州付近に発生し、各地に局地的・長時間の降雨をもたらせていた。そして、この日の午前中、熱海市伊豆山付近で土石流が発生したのだ。スマホで撮られた映像が報道され、その脅威の恐ろしさ、大きな被害が出ている様子が伝えられていた。
 このような非常時にコンテストなどをしてもよいのだろうかと考えた。被災した方々にはお見舞いの言葉しかないのだが、自分はどうすればよいかと考えた。無線をやっている者として、まず頭に浮かぶのは非常通信である。救助活動など有線での通信が困難な場合、無線による通信が設定される。それに対する備えをしなくてはならない。電波を出さず周波数を空ければよいのだろうか。当然、非常通信が発生した場合にはその通信に支障のある電波の発射は停止しなければならない。しかし、非常通信を受ける体制をとるためには多くの局がその非常通信を受信できる体制をとっていることが必要である。コンテストは競技として行われるのだが、多くの局がその周波数帯で受信体制を取っていて、微かな信号でも聞き逃さない状況になる。非常通信への備えという意味では、多くの局がその周波数帯で運用していることも意味があるのではと考えることにした。
 50MHz、144MHzはVHF、430MHz以上はUHFと言われ、短波帯のHFとは異なった伝播特性がある。光と似た直進性が強くなると言われている。つまり電離層反射による伝播ではなく見通しの直接伝播が主になるようだ。災害対応の活動では遠距離との通信よりもこの見通し範囲での通信が多くなると思われる。この周波数帯ではアンテナも小さくなり設営も容易である。
 私はQRPという数ワットの出力でアンテナも室内に張ったダイポールやホイップを使い、どの辺りまで交信できるか挑戦した。コンテストでは10は東京、11は神奈川、12は千葉というように運用地点を示す略号を交換する。それによると長野、栃木、群馬、茨城、山梨との交信ができていた。使用する設備によって出力が100W超はH,20W以上はM,5W以上はL,5W未満はPという略号も付加される。多くがMの局だったが、Pの局も9局あった。コンパクトな設備で運用している局も結構ある。
 今回は電信による通信だったが、非常通信の場合には効率からいって音声による情報伝達が主流になるだろう。それでも最悪の場合にはモールスが使われるかもしれない。商業電源が使えず電池による運用でも、室内に張るようなコンパクトなアンテナでもかなりの範囲との通信ができることが分かった。
 多くの局が運用して受信体制を敷いていたが非常通信が行われる状況は確認できなかったようだ。業務無線での交信は頻繁に行われていたことだろう。荒ぶる自然による大きな災害が続いている。無線で楽しませてもらっている自分としては災害への対処という面での無線を意識していきたいと思う。