パドルと言うとカヌーで使われる水をかくための櫂を思い浮かべる方が多いだろう。しかし、今回製作したのはエレクトリック・キーヤーでモールス符号を生成するための装置である。単純に2つのスイッチで、モールス符号の短点(Dit)を送出するスイッチと、長点(Dah)を送出するスイッチを組み合わせたものである。
モールス符号は短点と長点、そしてスペースを組み合わせてアルファベットやカナなどを送るものである。その長さの比率は短点を1とすると、長点は3、短点や長点の間隔は1、文字と文字の間隔は3、語と語の間隔は7と決められている。このタイミングに合わせて短点のスイッチと長点のスイッチを操作して符号を生成している。パドルは2つのスイッチを向かい合わせに設置して、通常、右のスイッチを押すと長点が出て、左のスイッチが押されると短点が出るようになっている。
モールス符号を送出するために、この左右のスイッチを高速で操作するので、スイッチの押す間隔(ストローク)や押すときの硬さ・粘り強さ・反発力など使う人によって好みが分かれるところである。そのため、市販されているパドルはさまざまな調整機能が組み込まれ、使う人の好みに合わせられるようになっている。
しかし、自分で使うパドルを作るなら、調整機能を組み込まなくても、製作の過程で使いやすくしてしまえばよい訳で、手軽にパドルを作ることが出来る。今回作ったのは基板垂直取り付けスペーサーというキューブ型のスペーサーを固定軸として、2枚のアクリル板を操作棹とし、その間にスイッチとなる金具を取り付けている。操作棹の間隔はキューブ型スペーサーの大きさで調整する。(8mmや10mmがある)スイッチの間隔は棹の間にある金具を前後に移動できるよう、基台に取り付ける穴を長円形に開けておき、締め付ける時に調整する。押すときの硬さ・粘り強さ・反発力はアクリル板の厚さや幅、長さで好みの状態を探せばよい。
こうして出来上がったのが写真の「お手軽パドル」である。簡単な工作なので小一時間もあれば出来上がる。接点としているビスと金具の接触抵抗など厳密に考えれば課題となることもあるが、通常の使用では困っていない。自分だけの道具を自作するのは、案ずるより産むが易しのようである。