XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

QRP & MLA

QRPだからできるMLA実験

 QRP(小電力通信)とMLA(マイクロ ループ アンテナ)は本来距離の離れた存在である。なぜなら、QRPの場合、小さな電力なので効率的に電波を放出するよう効率のよいアンテナを使用する。また、MLAはとても小さなアンテナなのだが放射効率はあまりよくない。そのためエレメントに太い銅管を使うなど高出力を乗せるようなものである。 ところがこの2つを合わせることで思わぬメリットがある。小電力とコンパクトな形状なので、実験を楽しむには好都合なのだ。小電力なのでアンテナに使う部品は高耐電圧のものでなくとも使うことができる。普通の電子回路に使うような部品でもほぼ賄える。コンパクトな形状のため、部屋の中で組み上げることができ、動作実験も天井から吊すような仮設でもできる。試行錯誤の繰り返しの実験を部屋の中で行えるのは有り難い。

 もっともっと簡易なアンテナをということで実験をしてきた。出ている局数が多く相手局が見つかりやすい7MHzのものだ。波長が40mにもなる周波数であるが、2.1mのアルミワイヤーで形作ったループに電波を乗せるようにする。直径70cmほどの輪になっているところに同調させるためのキャパシタを取り付ける。この部分は高電圧がかかるので通常のMLAではエアーバリコンなどが使われることが多いが、QRP仕様なので基板用のコンデンサやトリマー、ポリバリコンでも賄える。キャパシタはどの程度の値が必要なのか実験で確かめる。アルミワイヤーを受ける部分はさまざまな工夫が考えられる。直接接続するのもいいが、アルミのハンダ付けは一手間必要である。コネクタを使うにはどんなコネクタにするか思案のしどころだ。給電は小ループにするかトロイドコアでのリンクコイルにするか。また、リンクコイルの巻き数でSWRの値が変わってくるので何ターン巻くか。全体を纏めるにはケースに入れるか、その他の工夫をするのか。MLAとして使えるようにするには考え工夫するところがたくさんある。その一つ一つを実験を通して決めていく。これこそアマチュアの楽しみである。
 実験を繰り返し出来上がったものをアナライザで測定すると7MHzの普段使う周波数でSWRのディップ点が見つかり、整合はとれているようだ。トリマを動かしながら最良点に調整する。周囲の影響を多少受けるようだが、部屋の中でも概ね調整することができた。実際に使ってみる。7エリアの移動局が聞こえたので呼びかける。応答があった。しっかり電波が飛んでくれているようだ。この時のリグは約2W出力であった。

 QRP & MLAは 運用場所のロケーションと伝播のコンディションに大きく依存した設備なので、多くの局と交信するのは難しい。それでも、たとえ1局であっても自作した設備から電波が届いたという喜びは大きい。偶然性を楽しむアマチュア無線である。一局入魂の交信ができるよう、実験を楽しむ、こうしたニッチな取り組みもありだろう。