もちろんQRPでの実験である。これまでもいろいろなMLAを製作してきたのだが、MLAをトランシーバー直結にしたらコンパクトな運用ができるのではないかと思いつき実験をした。
BNCコネクタを取り付けたケースの中にMLAのキャパシタを入れ、そのすぐ傍でトロイドコアによる給電をする仕組みである。エレメントはターミナル端子によって取り付けるようにして、太めの銅線を使うことにする。できればエレメントを自立させたいのであまり大きなループは望めない。
手元にある素材をかき集め作ってみた。キャパシタは260pFのポリバリコンである。給電に使うトロイドコアはFT37#43の小さなもので、リンクコイルは5Tとした。エレメントに使う銅線はたまたま見つけたFケーブルの片方で130cmほどの長さである。
組み立ててリグに繋いでみる。ポリバリコンを回すと受信機のノイズが急に大きくなるところが見つかる。いろいろなバンドで試してみると10MHz帯から28MHz帯のバンドでポリバリコンの調節によってこのノイズが急に大きくなるところがあった。
アンテナアナライザで測定してみると、やはりそれぞれのバンドでSWRの下がるところが見つかった。7MHzでは残念ながらキャパシタの値が不足して整合が得られない。エレメントの大きさを大きくすれば整合点が見いだせそうである。SWRの値は低いバンドの方が高く、21MHz以上ではほぼ1に近いところまで追い込めることがわかった。10MHzではSWRは2程になるが、使えなくはないと思われる。このSWRの値はトロイドコアのリンクコイルの巻き数が影響しているので、エレメントの長さを変え低い周波数での使用をする場合にはリンクコイルの巻き数を調整することでもっとSWRを下げることができそうである。
さて、これが実際の運用に使えるかである。たまたまこの日はコンテストが行われていた。14MHzバンドでは海外の局が多数入感していた。呼びかけてみるが残念ながら応答は得られなかった。相手はkWの出力で出ているので強力に電波が届いているのだが、それに対してこちらは数Wの出力でこのようなコンパクトなアンテナでは太刀打ちできないのは当然だろう。
コンパクトなアンテナだが整合はとれて受信はできることはわかった。送信をしてもポリバリコンが焼損するようなこともなく使えそうである。このアンテナから放出される微弱な電波がどこまで届いてくれるかである。 製作記事
ある日、FT818NDにこのアンテナを繋いで21MHzをワッチしていた。強力な局が聞こえてきたので呼びかけた。何度か呼びかけを繰り返すうちコールバックがあった。ゾーン24のBY6の局であった。こんなコンパクトなアンテナでも海を超えて電波は飛んでくれたようである。その後、14MHzと21MHzで国内の3局と交信することができた。このコンパクトなアンテナは効率からもいつも使えるものではないが、伝播コンディションなどの条件が良ければ交信が楽しめそうである。こんな小さなアンテナからでも飛んでくれる電波の不思議さである。