XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ガンママッチング MLA

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MLAをガンママッチングで給電する

 その昔、19日発売の雑誌を待ちわび、手に入ると隅から隅まで目を通した。たくさんの広告からトレンドの傾向を把握し、記事からは技術や運用、伝播状況などからアイディアの種子を探していた。しかし最近ではそれがネットへと代わっている。それもネットサーフィンをしてサイトを探すことから動画サイトの閲覧が中心になってきた。
 動画サイトで気になったものを見ていると、次々に同じようなジャンルのものが紹介されてくる。そして興味を掻き立てられ動画に見入ってしまうのだ。中には冗長過ぎて内容のない動画もあるが、面白いアイディアに出合うこともある。
 ある動画に出合った。複数の30cm程のアルミバーを組み合わせたMLAアンテナで交信している様子を紹介していた。USAの局だったが小さなアンテナで国内の局にも苦戦をしながらも交信を重ねていき、最後には5W QRPとMLAでもBig DXを得られたという話である。
 この動画を視聴していてアンテナの構造が気になった。ループを作るのにアルミバーを連結するというアイディアも面白いのだが、給電方法がガンママッチだったのだ。ガンママッチとは同軸ケーブルの編組側と芯線側のアンテナへの接続点をずらせてインピーダンスマッチングを行う方法である。八木アンテナやスクェアローアンテナでよく使われている方法で新しいやり方ではない。しかし、MLAではスモールループ給電やトロイドコアを介しての給電、または複数のキャパシタを使う方法が使われているのは知っていたが、ガンママッチでの実践に初めて出合ったのだった。
 さっそくこの給電方法での実験を行った。MLAのエレメントの一部をむき出しの状態にして同軸ケーブルのGND側接続点から離れたところに芯線側の接続を行えばよいと考えた。MLAのキャパシタを調整しその周波数の同調している状態にする。そして芯線側の接続点を動かしてSWRが低くなるよう整合を取った。すると期待通りにSWRを下げることができることが分かった。ガンママッチを使うことで簡単な構造でMLAを作ることができそうである。
 これまでの実験でループに入れるキャパシタの位置は必ずしも給電点の対角でなくてもよく給電点のすぐ近くでもよいことが分かっている。そこで。キャパシタとガンママッチの給電部を一つのプラスチックボード上に組み上げ、エレメントのワイヤーをそれに取り付けるMLAを製作した。マッチング部は芯線側からのラインにミノムシクリップを付け、むき出しにしたエレメントワイヤーに接続する方式である。この接続を動かすことでインピーダンス整合の調整を行う。
 ネット動画から得られたアイディアでおもしろいアンテナを作ることができた。アイディアの種子は思いもよらないところにある。さまざまな人が情報発信をし、交流できるのは有難いことであり、楽しみを広げてくれる。