XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

Trap EFHW その3

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 季節が変わり、やっと伝播状況がよくなってきた。先日、いつものようにワッチをしていると聞こえてくる局数が少ない。これは他のバンドが開けているのでそちらに移っているのではないかと考えた。バンドを変えてみるとハイバンドが開けていた。いつもは静まり返っている周波数帯であちらこちらで交信が聞こえる。18. 21. 24 .28MHzと上がっていくとどのバンドでも交信が聞こえる。あまり強くはないのだが、ハイバンドでも電波が飛んでくれるようになってきたようだ。
 私はほとんど自分ではんだ付けをしたリグを使い、自作のアンテナで運用している。しかし1つだけメーカー製のリグをセットしている。HFからUHFまでをカバーしオールモードというQRP機である。このリグの良い所は多くのバンドをスイッチ一つで切り替えられることである。18MHzから28MHzに切り替えるのにボタンを押すだけでいい。とても容易にいろいろなバンドでの運用ができるのだ。そのために接続しているのがTrap EFHWである。全長5.8m程のワイヤーアンテナだが、トランスフォーマーを介してリグに直結している。こんな簡単なアンテナでも、18MHzから28MHzまで何の切り替え操作もせず動作してくれる。各バンド毎にトラップを設けているので、各周波数ごとに半波長のアンテナとして動作し、入力インピーダンスはどのバンドでも同じような値になっている。そのため49:1のトランスフォーマーを介するだけで整合を取ることができるのだ。
 アンテナの整合を考えることなく、バンドを移動できるのは便利である。電離層の状況は刻々と変化し、伝播状況もめまぐるしく変わる。たまたま条件の良いバンドを見つけたら、そこで短時間の交信を行い、またバンドを移動するという運用である。QRPであるので、呼びかけても気づいてもらえないことも多いが、伝播条件に恵まれれば、互いの電波がものすごい強力さで伝わることがある。自然条件を相手に偶然を楽しむにはこうした手軽なアンテナが便利だ。
 ところで、同じように調整不要で複数のバンドで使えるアンテナにロングワイヤーがある。9:1のトランスフォーマーインピーダンス変換をして、1本のワイヤーでほどほどの整合を得るものである。複数のバンドで使える特定の長さが割り出されていて、その長さのエレメントを伸展すればバンド切り替えの操作をすることなく使える。しかし、どのバンドでも良好なSWRを得ようとするととても長いエレメントが必要になるのが弱点なのだ。
 部屋の壁に開けた穴からワイヤーを出し。グラスファイバーのポールでエレメントを伸展している。こんな手軽なアンテナを接続しておくだけで複数のバンドに簡単な操作で出られるのはありがたい。手間をかけて楽しむ場面と、自作によって手間を省こうとする場面、両面で達成感を得ようとするのがアマチュア無線の醍醐味である。