XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

コンパクト バーチカルアンテナ

5mの釣竿を使ったバーチカルアンテナ

 EFHWは手軽に設置でき扱いやすいのだが、半波長の長さがあるので結構広い場所が必要である。森林など自然の中ならのびのびと伸展することができるが、公園など多くの人が利用する場所では他の利用者の迷惑になることがある。場所を取らず周りの人に迷惑をかけにくいアンテナを考えることにした。
 コンパクトなものではマイクロループアンテナが手ごろだが、アンテナとしての効率はあまり望めない。少しでも効率の良いものをと垂直アンテナを考えた。これは占有面積が狭くても設置することができ、うまく調整すれば効率も期待でき、垂直偏波で低い打ち上げ角のため伝播状況によっては思わぬ遠方まで飛ばしてくれる。ダイポールアンテナを垂直にしたような形状だが、片方のエレメントは大地を鏡のように利用したもので、給電点でのインピーダンスは理論上36Ω程、直接同軸ケーブルを繋いでもそこそこ給電できる。
 短いとはいっても低い周波数ではエレメントの長さが長くなり、垂直に立てる機構を作るのが難しい。そこで、5m程の振り出し式釣り竿に沿わせる形状とした。エレメント長は【 300÷周波数(MHz)÷4×0.95 】で求められる数値でほぼ整合点が得られるが、実際に設置して調整を行う必要がある。14MHzではおおよそ5m程のエレメント長になるのでこのバンドより高い周波数なら5mの竿でも大丈夫そうだ。
 垂直アンテナでは接地が重要になる。給電の一方をしっかりグラウンドに接続することでもう一方のエレメントが機能するからだ。しかし、移動運用などでは良好な接地を用意するのは難しい。そこでカウンターポイズという擬似接地を使うことにする。地面に這わせたワイヤーを接地の代わりとするものだ。より効率の良いものにするには数多くのワイヤーを使うのが良いとされるが、今回は3mほどのワイヤー3本を使うことにした。
 マルチバンド仕様にするために、エレメントはギボシ端子による継ぎ足し式にする。28MHzで同調がとれるようエレメント長を調整し、そのエレメントに継ぎ足して21MHzのエレメントを取り付け、さらに18MHz、14MHzでと同調するようエレメントを継ぎ足すのである。ギボシ端子での接続では強いテンションが掛かると抜けてしまうのだが、今回は短いエレメントであり、加重も小さいので移動運用程度の運用なら耐えられると考えた。
 より低い周波数の7MHzと10MHzでも使いたいのでローディングコイルを使うことにした。架設する釣竿の長さが短いので低い周波数では1/4波長の長さのエレメントは無理なのだ。効率は下がるようだがコンパクト化のため致し方ない。7MHzに合わせたコイルを挿入し、10MHzで使うときはコイルの一部ををバイパスする仕組みである。昔のフイルムケースを巻き芯に使ったコイルである。試行錯誤を繰り返して巻き数を導き出した。このコイル部はギボシ端子の接続で取り外しできるようにしている。
 ほぼ出来上がり庭先で調整中、聞こえてきた局に呼びかけたら、1,2,3,7エリアの局と交信できた。QRPでの運用でもしっかり電波は飛んでくれた。
 コンパクトなアンテナで持ち運びにも便利である。できるだけ周りが開けているところが望ましいが狭い面積で設置できる。ハイバンドの伝播コンディションも開けてきているので、このコンパクトなアンテナで手軽な運用を楽しみたい。

                       XRQTechLab ”Vertical Ant”