自作の機器がどの程度活躍してくれるか確かめるのは楽しい。ほとんどは期待外れなのだが、手塩にかけたものが期待通りに動いてくれた時には嬉しいものである。
はこれまで作ってきたものの改良なので、ある程度の予測は出来ている。高性能というわけではないが、そこそこの運用はできるだろうと思う。しばらくの期間これを使って運用をしてみた。
使うリグはMTR4BというKD1JV Steve WeberがデザインしたQRP機でLNRから販売されていたものだ。アルミの塊をくり抜いた筐体で、内部に電池を組み込むことができる。私は14500というリチウム電池を2本直列にして電源としている。3.5MHz、7MHz、10MHz、14MHzで運用でき、出力は2W程度である。運用場所は木造家屋の2階の床に、MLA4号機を小さな三脚に載せて設置した。すぐ隣にリグを置いているのでアンテナのループが腕が振れてしまうほどで、感電に注意しながらの運用だった。
MLAの特徴としてループの向きに指向性を持っている。ループを回転させると受信音が大きく変化する。しかし、八木アンテナ等のようにアンテナを相手局側に向けるという使い方ではなく、近隣の雑音から逃れるためにアンテナの向きを変えるという使い方が良いようだ。HFの場合、相手局からの信号はさまざまな経路で伝播してくるのでループの向きを変えても交信にはあまり効果はないようだった。
受信では屋外に設置してある5m程の高さのEFHWと大きな差はないように感じた。お空のコンディションが良ければたくさんの局が聞こえてくるし、全く聞こえないこともある。送信については効率はあまり良いとは言えない。なにしろ波長の何十分の一という70cmΦ程の小さなエレメントからの放射である。タイミングよくルートが開けたときに相手まで飛んでくれると考えた方がよいようだ。
日々、短時間の運用で交信数は多くはないが、それでも6,8を除く各エリアの50局ほどと交信した。近隣の海外局の信号も聞こえていた。
ある時、北海道ハムフェアの記念局が全国から呼ばれていた。しばらく聞いていて呼びかける局が少なくなってきたところでコールする。相手局は強力な電波を出しているのでよく聞こえているが、こちらからは微弱な電波である。一度”QRZ XR?”という返信があったが交信には至らなかった。また、朝方、小田原のお馴染みさんが聞こえていたのでお声がけした。他の局に潰されてしまうことが何度かあったが、コンディションが上がった折にピックアップしてもらえた。RSTの交換はしたものの新しいアンテナで出ていると送信したのだがうまく伝わらずフェーズアウトしてしまった。また一方で、リグにスイッチを入れるとCQが聞こえてきたので呼びかけると599で繋がった。愛媛の記念局だった。QSOは正に出会いである。さまざまな偶然が重なり合って交信ができるのが面白い。
効率の良いアンテナとは言えないが、全く役に立たないとも言い辛い。そこそこの活躍をしてくれるアンテナだと思う。今回は7MHz、10MHz、14MHzでの運用だったがキャパシタを調整するだけでマルチバンドで使えるので小さな移動運用には便利だ。
小さく折りたためて持ち運ぶことができ、設置場所もレジャーシートを広げたくらいで十分。ちょっと移動運用を楽しみたい場合に使えるアンテナと言えるだろう。