XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

A1クラブ 非常通信訓練

f:id:shig55:20220310072225p:plain

Go Bagの中身 3.5MHzではアルミ線を2本繋ぎ

 電信愛好家の集まりのA1クラブでは、毎年さまざまな想定で非常通信訓練をしている。今年の想定は「商用電源喪失&車移動不可という状況」ということで、短波(HF)を使った電信でどのような情報伝達が出来るかを訓練する予定である。

               A1クラブのサイトへのリンク

 避難所間の通信や救援機関の間の通信は主に近距離なので、V/UHFトランシーバーによる音声通信が主体になるのだが、大規模災害で遠距離との通信をする場合、僅かな装備で交信が出来るHFの活用も考えられる。装備の準備とともに通信技能を高めておくことも大事なことだ。そこで、今回は車両を使わず人が徒歩や自転車で持ち運びのできる装備で移動するアクティベータ局とそれを支援する電源や通常の装置が使えるチェーサー局との間での交信を試みる。

 私は写真のような装備でアクティベータとして参加するつもりだ。しかし、外に避難するのではなく自宅の室内か庭先から電波を出す。アンテナはMLAというとても小さなループアンテナで上から吊るす構造である。無線機は掌に乗る2W程度の出力、イヤフォーンで受信する。電源はリチウム電池3本である。一つの袋に収められるので”Go Bag”と呼ばれる装備だ。周波数は夜間は3.5MHz、昼間は7MHz、状況によっては14MHzでの運用を考えている。

 こんな小さな装備で交信が出来るのか心配なので、訓練の前に何度かこの装備での交信を試みた。80mの波長の電波を直径1.4mほどのループに載せるので効率は良くない。家の周りに伸展しているワイヤーアンテナではたくさんの局が聞こえる時でも、このMLAでは数局しか聞こえてこない。それでも根気強く呼びかけていると数局と交信することが出来た。埼玉、山梨、三重の局であった。7MHzでは直径70cmほどのループアンテナである。このバンドはたくさんの方が運用されているので宮城、石川、富山、福島、山梨、千葉、栃木、長野、三重などの局と交信することが出来ている。相手局の受信性能に助けられているのだろうが、微弱な電波でもV・UHFでは届きにくい遠距離の局との情報伝達ができそうである。

 大規模災害時、公共通信の復旧が第一義だが、それを補完する意味でも個人レベルで通信網を確保しておくことは必要だろう。今回の訓練では実施日時を公表しているので互いに交信しようと身構えている。通常の、たまたま聞こえてくるのを待っている状態であるのとは異なる。発災時という状況でアマチュア無線がどの程度使えるかの訓練だ。電信では情報量が限られるが、僅かな情報でも役立つ場面があるはずだ。コンディションによって伝播の様子が大きく変わるHFである。どのような結果になるか期待したい。