XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

A1CLUB 非常通信訓練2023

持ち運べるコンパクトな設備での運用

 今年で13回目になる非常通信訓練が3月11日、12日に行われる。A1クラブではその目的を「大規模災害に備え無線設備の確認及びCW通信技能の維持を目的とします。今回は特に、商用電源喪失&車移動不可という状況を想定し、徒歩可搬可能なHF CW無線設備の構築および運用に関する各局の知見を集め共有することで各局の今後の備えに資することを主目的としました。」としている。
 災害発生時、時間経過と共に通信の果たすべき役割が変わってきてさまざまな様態が必要とされる。発災当初は避難、救助、救援が中心になるので、近距離でのU・VHFの音声通信が主体になるであろう。被災地外との通信は通信網が機能していればよいが、それが剪断された場合にはHFでの通信が必要になる。衛星通信が使えればよいのだが、その設備は十分に普及しているわけではない。通信インフラが機能を回復するまでの間の補完としてアマチュア無線が役立つことがあるかもしれない。これまでも幾多の災害、先のトルコ・シリア地震でもHFでの非常通信が行われたと聞く。
 小さな出力、仮設での設備、電信での情報伝達は効率のよいものではないかもしれないが、最後の、最後の手段として使える体制を準備しておくことは必要であろう。そこで、電信愛好家の集まりであるA1CLUBではこのような訓練を続けているのだ。

 訓練は被災地からの情報を発信する役割であるアクティベーターと、被害を免れ、救援する立場のチェーサーとの間で交信を行う。アクティベーターは徒歩で持ち運べる小さな無線設備を電池などの電源で仮設し運用、通常の交信を行う。その際、どんな工夫をして無線局を開設・運用し、どのような交信状況であったかを事後報告することで災害時の非常通信への知見を多くの人たちを共有しようとするものである。
 アクティベーター局からは「CQ CQ A1C ECT」という呼びかけが行われる予定である。ECTとは(Emergency Communication Training)非常通信訓練ということだ。訓練とは言っても非常通信ではないので通常の交信と同じ扱いになる。多くの方に参加してもらい、その感想を共有できれば訓練の成果がより充実したものになると思う。

 災害への備えはさまざまな分野で行われなければならない。救命救急や生活支援、インフラ復旧など想定外を想定して進められている。あの大震災の経験を忘れることなく、身の周りの備えをしていきたいものである。