XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

A1クラブ非常通信訓練 考察

f:id:shig55:20220314124609j:plain

コンパクトな装備での運用



 商用電源が喪失し、公共交通や車が使えない状況での非常通信という設定で、電信愛好家のクラブが非常通信訓練を行った。要救援者としてアクティベーターと呼ばれる移動局を、支援者としてチェーサーと呼ばれる通常の無線設備が使える局を参加者とした訓練である。私はアクティベーターとして参加し、GoBagという持ち運びのできる装備を使って電波を出し、どの程度の局と交信できるかを試みた。延べ3時間ほどの取り組みだったが結果は厳しいものだった。その中での気づきをまとめておきたい。

    使用設備 トランシーバー QCXmini 出力2W リチウム電池3本使用
            アンテナ 自作MLA(70cmφ及び140cmφのループ)

○微弱な信号を見つけてもらうには情報が必要
 3.5MHz、7MHz、14MHzを使ってそれぞれ伝播状態がよいであろう時間帯での運用だった。CQを出しチェーサー局に見つけてもらい呼びかけてもらうのだ。予め運用予定時刻は実施計画と共に公表してある。ただし、他の運用局もあることから独占して周波数を使うことはできない。バンドの中でどの周波数に出るかはリアルタイムでクラブのサイトで周知するようにした。20:00JST、3.5MHzで運用を始める。CQを繰り返すが空振りが続く。1時間の運用で交信できたのは2局であった。千葉県成田と静岡県三島の局である。相手局の信号は599と明瞭だったが、もらったレポートは329と319というノイズの中にかすかに信号が聞き取れるという状態だったという。微弱な信号なので周波数がわかっていなければ対応してもらえなかったレベルである。時刻と周波数という情報があったことで成立した交信である。

○微弱な信号は見つけてもらえない
 7MHzと14MHzはそれぞれ9:00JSTと14:00JSTから運用した。ちょうどコンテストが行われていたようでバンド中が賑わっていた。そのためこちらが出られる周波数が見つからない。コンテストで使用される周波数から離れたところでCQを出す。その周波数をクラブのサイトに掲示するがROMしている人はほとんどいないようだった。CQを出しているとその周波数でCQを出してくる局があり交信を始めてしまったため、周波数を移ることも複数回あった。そして空振りを繰り返して1時間が終わった。強力な電波が行き交う中、端っこのほうで微かな信号を出しても気づいてもらうのは無理である。

○それでも電波は飛んでいく
 アクティベーターとしての運用は厳しいものだった。しかし、運用が終わって後、同じ設備でコンテストに出ている局に呼びかけてみた。一回でこちらの信号をとってもらえないこともあったが、それでも愛知、宮城、千葉、三重、栃木、北海道、山口などの局と交信することができた。相手局の優秀な受信設備に助けられているのだが、こちらからの微弱な信号でも交信はできるのだ。相手局に探してもらうことは難しくても、こちらから相手局を探し呼びかけることで交信ルートを設定することができそうである。

 Para80setというリグがある。WWⅡの折、孤立した味方にパラシュートに付けて送ったという無線機である。水晶発振子の固定周波数だったという。情報ルートを設定するにはこのような対応も必要だったのだろう。さまざまな情報が溢れる現在、それがせん断された場合を想定しての対応をしておくのも大事だと思う。