XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

QSB  

QRP機で宇宙を感じる

 直進性が強いV/UHF帯の電波では比較的少ないようだが、HF帯の電波ではよく経験する現象である。フェージング(Fading)とも呼ばれ、電波の強さが強くなったり弱くなったり変動することである。さまざまな要因があるようで、電離層で反射するときに偏波面が変化したり、電離層の電子密度が常に変化するため反射したり突き抜けたりすることから起こるようだ。また、周波数によって反射する電離層の高さが異なるので周波数帯によってはいくつもの電離層を突き抜けて進むことになる。その際に電離層に吸収されることもあり、それが一定ではないため戻ってくる電波の強さが変動することもあるようだ。その他にもさまざまな要因で電波信号の強さが変わるのをQSBと言っている。(本来Q符号は尋ねたり、応答する場合に使われるのだが、ここでは名詞的に使っている)

 無線電信の通信をしているとこの現象に頻繁に出合う。もちろん伝播コンディションが良い時にはQSBを感じることもなく、安定した交信を楽しめるのだが、そうでない場合にはQSBとのんびりと付き合うことになる。QSBはその原因がどのようなものによるのかで変化の周期が異なるようだ。早い周期で強くなったり弱くなったりを繰り返すこともあれば、だんだんに電波が強くなり、しばらくして弱まっていくというゆったりした変化の時もある。
 信号は聞こえていても電波の強さが強くなったり弱まったりで、なかなか相手局と交信ができないことがある。例えば、ある局に対して呼びかけをしている場合、呼びかける局からの伝播は当然その発信地点からのさまざまな経路を経て相手局の届く。たまたま伝播状況の良い電波が強力に相手局に届き交信を成立させていく。交信を成すには自局と相手局との相性ともいえる伝播状況の良い瞬間を狙って電波を出すことが必要なのだ。相手局の信号がだんだんに強くなってきたタイミングを狙って呼び出しを掛ける。短い周期のQSBの時にはその変化を見計らって運用する。ただ厄介なことには、こちらからの伝播の経路と相手局からの経路は同じとは限らない。相手局が強く聞こえるからと言って、こちらからの電波が強く届くとは限らないのだ。
 また。バンドをワッチしていて微かに信号があることはわかるが内容を判読することができないような場合、しばらく聞いていると徐々に信号が強くなってくることがある。信号を読み取れるまで強くなってきたところで相手局に呼びかけて交信する。伝播状況が改善してきているのか低下してきているのかしばらくワッチをしていないと掴めないが、それを読み取るように聞き続けることもアマチュア無線の醍醐味であろう。
 
 QRPでの交信は伝播状況頼みの面が強い。安定して伝播状況が良ければ問題ないが、不安定な時には弱い電波であるからこそ伝播状況に依存するところが大きい。これはQSBとは異なるのだが、同じ都内の局が微かに聞こえ、北海道の局が強力に聞こえることがある。近畿と九州の局が交信しているのが聞こえているが関東の局がほとんど聞こえないこともある。電波の伝わりは不思議である。それは宇宙の様々な要因の複合で電波が思わぬ経路を辿ってきているからであろう。宇宙天気予報というサイトが情報通信研究機構NICT)から提供されている。
 小さな無線設備から大きな宇宙へと思いを馳せる、これもハムの楽しみである。