XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

交信の楽しみ方

電信による交信の楽しみ

 アマチュア無線は電波を利用させてもらい交信を楽しむ。その交信の仕方にはさまざまな楽しみ方がある。大きく分けて交信の中身を楽しむか、交信そのものを楽しむかに二分できるであろう。
  電波は指向性を持たせることも出来るが、短波帯での運用などではどのような伝播をするかその時の宇宙の状況など不確実なことが多い。ワイヤーアンテナを使う場合など特にその傾向が強い。そのため特定の相手との交信を狙うよりも何処かの誰かと交信できることを楽しんでいる。偶然、その時間その周波数で出会うことのおもしろさだ。名前や所在地の紹介をしあったり天候など当たり障りのない話題になることが多いが、見ず知らずの人と話をするのも楽しいものである。欠点は電信では一文字ずつの送受信なので時間がかかることだ。和文の交信では1時間近くになってしまうこともある。それでも欧文で単語のスペリングを思い出しながらの話でほどよい脳トレになっている。

 一方、アマチュア無線は本来技術的な興味に基づくことが多いので、電波がどのように飛んでいくか、通信をするための技能はどのような工夫が必要か、トランシーバーなどの設備はどんな工夫をしているか、どんなロケーションがよく飛ぶかなど技術的なことを確かめるための交信もしている。
 携帯電話を使ってのチャットやおしゃべりと大きく異なるのが後者の交信で、電信ではRSTと言われる了解度、信号強度、信号の質のデーター交換だけの交信も多い。アマチュア無線の沼に嵌まっていない人から見たら「何でそんなことが面白いのか」と思われる味気ない交信である。私もほとんどがこのような交信で、ほぼ10秒ほどで終わってしまう。それでも、同じ局と100回以上も交信している。
 アンテナの工作はバリエーションが多い。一つの工夫毎にその成果を確かめたい。新しいトランシーバーを入手したらどのような使い勝手か試してみたい。電源の工夫をしたがどのくらい使えるか確認したい。モールス符号を送り出す電鍵やパドルを作ったら使い心地を確認したい。伝播状況が厳しい時でも通信できる技能にチャレンジしたい。パイルアップというたくさんの局が一斉に呼び掛けている中でいかにタイミングよく相手に呼びかけるか挑戦する。小さな出力の無線機で本当に交信できるか試したい。山の上や公園など屋外で運用してみたいなど、交信の中身よりも交信をすること自体に重点を置くことが多いのだ。
 そっけない交信で、ゆっくり交信を楽しみたいという局には申しわけない気もするが、電波で繋がることを楽しむ仲間として、ある意味、こんな味気ない交信も皆さん理解してくださっていると思う。交信自体が実験であるという位置づけは大事なのだと思う。携帯電話など通信が当たり前にいつでも繋がる状況だからこそ、アマチュア無線では通信内容よりも通信できることを楽しむことが残っているように思う。
 ただ、これを楽しんでいる人々の層がどんどん高齢化しているのも実情だ。若い人たちにこの実験の面白さが伝わっていないのが残念である。デジタルにせよアナログにせよ、自然を相手にあれやこれやと試してみる実験としてのアマチュア無線の楽しさを広めたいものである。