XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

オーバーシーズ

伝播状況に恵まれればQRPでも・・・・


 私の貧弱な設備では海外局(オーバーシーズ)と交信する機会はめったにない。それでもWSPRのような器械によるシステムでは北アメリカまで電波が届いていることは確認できている。しかし実際に遠い外国の局と信号の授受ができたのは数えるほどである。

 この日は世界的なコンテストが行われていた。どのバンドもたくさんの局が参加していて、特に21MHzバンドではどこも信号に満ちていて割り込む余地がないほどだった。どの局もコンテスターらしく無駄のない見事なキー捌きで交信している。コンテストナンバー交換だけのほんの数秒の交信である。このコンテストは交信ごとにナンバーが増えていくコードを送り合うのでその局がどのくらいの交信をしているかが一目瞭然である。恐る恐る聞こえる局に呼びかけてみるが殆ど無視される。私の弱い信号では相手局に認知されないのだろう。それでも呼びかけ続けると、応答をもらえることがある。相手局からのナンバーは数百番代であるが、こちらから送るナンバーは1桁番である。力の差を見せつけられる。結局、14MHz、21MHzでの交信で、ハワイやブラジル、USAなどの局と繋がった。

 夕方になってバンドを覗いてみると、だいぶ静かになっている。21MHzバンドではいくつかの信号が聞こえているが信号強度は弱くなっている。呼びかけをしても全く反応がない。電離層は時々刻々と変化し伝播状況が変わってしまったようだ。7MHzバンドに移ってみる。国内は電波がスキップしているようで、普段なら多くの局で賑やかなのだが、ほとんど信号が聞こえない。シーンと静まり返っている。静かなバンドの中を彷徨っているとくぐもったような遠距離からの独特な信号が聞こえてきた。カナダの局のようだ。CQを繰り返している。ダメ元と考えて呼びかけるとQRZ?が返ってきた。さらにこちらのコールサインを送信する。すると私のコールサインの一文字が異なる応答がきた。私の信号がかすかながら届いているようだ。コールサインを繰り返して送る。すると私のコールサインにクレッションマークがついて送られてきた。嬉しくなってOKを重ねて送る。私の信号がカナダまで届いたのだ。その後、ナンバーの交換を数回のやりとりで行い交信を終えた。

 7MHzなど低い周波数では比較的地表に近い電離層と地面の間を電波が何度も反射しながら伝わっていく。反射ごとに電波は減衰し、私の小電力かつ効率の良くないアンテナからの微弱な電波はとてつもなく小さくなって伝わったのだろう。相手局は高性能なアンテナでノイズに埋もれる私の微弱な信号を拾って相手をしてくれたのだ。逆に相手局からの電波は私の数10倍、数100倍の出力だろうがQSB(周期的な電波強度の変化)を伴いながらもしっかりと届いていた。
 数秒で終わるはずの交信に数分掛かってしまった。微かな信号でも意志が伝わる電信だからこそできた交信であった。コンテストであるにもかかわらず、カナダの局がじっくりと相手をしてくれたことに感謝である。アマチュア無線の面白さはこうした非効率ではあるが偶然性や自然の営みを感じながら電波の振る舞いを感じることなのだと思う。相手局に負担をかけながらではあったが、心に残る交信であった。