XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

Mizuho MX-2Fは健在です。

小さなリグ、小さなアンテナでも・・・古くても・・

 ミズホ通信の高田社長が鬼籍に入られてから月日が流れた。AMのハンディー機からDSB、そしてSSB/CWと少しずつ変化しながら、片手で持てるという当時唯一の形状だったピコシリーズは人気を博していた。そのユニークさに魅せられてほとんどを手に入れたのだが、今では棚の飾りでなかなか活躍する機会がない。
 そのピコシリーズの最後のリリースになったのがMX-2Fである。1994年4月ころだったと思う。MX-2Fは144MHz帯のCW/SSB機で単三乾電池6本で動作した。公称出力は1Wで、感度もよかった。それまでのピコとは一味異なるデザイン・仕様でピコシリーズがこの方向に変わっていくのかと期待した。しかし、時代の趨勢はパソコンや携帯電話に移ってしまい、アマチュア無線が勢いを失ってしまっていた。新しいピコはこの機種のみで後に続くものはなかった。

 先日6m&Downコンテストが行われていた。開催されることを失念していて、気づいたのが終了の2時間前。なにか面白い企画で参加できないかと思って取り出したのが、このMX-2Fであった。アンテナもチャレンジした。1mmΦのエナメル線をローディングコイル状に付加したダイポールである。BNCコネクタに直付けできる仕様になっている。概ね同調するように作ってあるが、どの程度飛んでくれるかは未知である。
 リグを机上に置いてスイッチを入れると強力な電波が飛び込んできた。頃合いを見計らって恐る恐る呼びかけると返答があった。どうやら電波は飛んでくれているようだ。おなじみの局も出ていてあいさつ代わりの交信をする。さすがにこの周波数帯で運用する局は多い。普段はあまり信号が聞こえないのだが、イベントならではの賑やかさだ。
 結局、1時間半ほどの運用で22局と交信することができた。マルチは7で東京、神奈川、埼玉、栃木、茨城、群馬、静岡と繋がった。実際には0.6~0.8W程度の出力だろう。小さなアンテナで微弱な電波しか出ていないのによく飛んでくれた。もちろん相手局の受信設備に助けられてのことだが、電波のおもしろさを実感したひと時であった。

 このリグの中身を見ると全てスルーホール部品でできている。基板に穴を開けて部品のリード線を通しハンダ付けしてある。部品同士が林立するような密集状況で、さまざまな配線が行き交っている。今のリグは集約化が進んでも表面実装が普通になり、整然と、且つすっきりとした基板が主流だ。しかし、30年前は手作業で組み立てられていたのだ。それが実際の交信でも十分に活躍してくれた。ポリバリコンでの同調は相手局の周波数に合わせるのに手間取ることもある。フィルターの切れがブロードでいくつもの局が聞こえてくることもある。しかし、無線機としての機能は健在だった。
 JA1AMH高田さん、JH1FCZ大久保さんなど先達の方々がものづくりの面白さ、楽しさを広げてくれていた。残してくれたものがこうして活躍してくれている。それを使いながらノスタルジーに浸ってしまうのは自分自身が年老いたということなのだろう。・・・・・・ それでもまだ楽しむぞ。