前回の記事のように、剛性のあるワイヤーを使えば、形を整えるための配線カバーなどを使わなくても、MLAとしての性能を出すことができることがわかった。市販されているMLAの多くが、銅パイプや太い同軸ケーブルを使って、ループを作っている。太い素材を使うほど構造をしっかりすることができる。細い素材でも、仮設として使う程度なら前回の記事のような細い素材でも使えそうだということだ。
さて、もっと簡略化したMLAを作れないだろうかと考えた。先日、旅行に行った際である。旅館で電波を出すとすればどうすればよいか考えた。窓から釣り竿アンテナをのばすのも一つの方法だが、結構目立つことになる。簡単に設営でき、撤収も容易、他の客に迷惑をかけず、目立たないものがいい。部屋の中を見回して、考えを巡らせていて、あるものに目が留まった。障子である。窓のある開口部の内側に障子がある。この障子にMLAを貼り付ければ電波が出せるのではないか。
そこで、柔らかいワイヤーを使ったMLAを作ってみた。2.5mのワイヤーで、その長さの真ん中のところにトロイドを通し、リンクのコイルを巻いてRCAプラグを取り付ける。変換プラグを介してBNC同軸ケーブルを接続する。キャパシタは前回と同じポリバリコンである。ループは丸い輪ではなく菱形とする。つまり、同軸ケーブルをと取り付けてある給電点部分を頂点として、障子に洗濯ばさみで止める。ここはハンガーなどを止める為の二股に分かれた洗濯ばさみである。ループの左右は洗濯ばさみを使って障子の桟に留め、広げるようにする。キャパシタ部分は吊り下げられたままである。
この状態で測定してみると、しっかりと同調点が出ており、使えそうである。庭先移動で実験をした。縦の固定にはグラスファイバーのポールを使い、横の張りにはプラ棒を使って、菱形のループを構成した。7MHzで受信雑音が最大になるよう調整する。バンドの中を聞いてみるとたくさんの局が聞こえてきた。CQを出したが応答がない。受信はともかく、送信は無理なのだろうかと思いつつ、移動局に呼びかけてみた。すると返答があったのだ。30分ほどで5局との交信ができた。結構遠いエリアの局である。
この日はたまたまお空のコンディションがよかったのかも知れない。しかし、2WのQRPでもこのアンテナで交信することができた。自然を相手に無線を楽しむというスタンスでならこのアンテナは使えそうである。なにしろアンテナ全部が掌に載ってしまうコンパクトさであり、ステルス性が高いのだ。
リグ、電源を含め、ポーチの中にすべて収納することができる。次の旅行では旅館から電波を出してみたい。その際はハイバンドのコンディションも上がってくれればいいのだが。