
今年のフィールドデーコンテストは猛暑の中での開催になった。高い山に登ればこの暑さからも逃れることができそうだが、そんな体力はない。このところ製作してきたコンパクトアンテナを使って野外運用をしたかったのだが、諦めての自宅運用である。
趣向としてはモバイルバッテリーを使った運用だ。アップコンバーターで12Vを電源として使う。USBのA端子と5.5mmΦのプラグの間にコンバータを入れたコードを入手したのだ。使える電流はあまり大きくはないのだが、QRPなら使えそうである。
リグはQMXというQRP Labsから頒布されているマルチバンド機である。消費電流は1A程度なので、このコンバータで動作することを確認している。どのバンドも2W程度の出力が得られる。アンテナは家の周りに張ったトラップEFHWとロングワイヤー。このような設備でどの程度の交信ができるかを試してみた。
このコンテストは21時から始まり、翌日の15時までである。運用できたのはスタートの頃と明け方、そして終了間際のそれぞれ1時間ほどであった。初めはたくさんの局が出ている7MHzからだ。強力な局がたくさん聞こえてくる。呼びかけをするがなかなかコールバックがもらえない。CQを繰り返す局にタイミングを計り呼び掛け、交信をする。甲信越の局が多いが中国、近畿、東海、東北などの局と交信する。このコンテストでは使用している電力を表示する記号を交換する。50Wまでの局がM, 10Wまでの局がL, そして5W未満の局がPである。どの局もMを送ってくる。私はPを送った。その後14MHzを覗いてみると聞こえる局は少なく、都内と北海道の局と交信した。3.5MHzに移り、岐阜や兵庫の局とも交信できたが、ほとんどが甲信越の局だった。
翌日の早朝、3.5MHzを聞いてみると既に運用している局がいた。移動局は朝が早いようだ。まだ競争が激しくないのでコールバックがもらえやすい。その後7MHzに移って交信する。やはりローバンドはそこそこ電波は飛んでくれるが信号が浮き沈みする不安定な状況だった。
午前中の用事があったので昼過ぎからハイバンドに出てみる。21MHzは結構にぎわっていて信号も強い。どうも四国、中国辺りが開けているようで数局と交信する。北海道の局とも交信できた。電波を反射してくれる電離層の状況は時々刻々と変化するのだが、ちょうど自局と相手局の間を繋げてくれるところに電離層が発生しているようだ。NICT(情報通信研究機構)から”臨界周波数”の観測データが公開されているのでよく見ている。コンテストをしている時のデータは見ていないが、きっと赤い帯が高い周波数まで伸びていたのだろう。
もっと上の周波数ではどうだろうと28MHzに移ってみた。普段はほとんど信号を聞かないバンドなのだが広いバンドのあちらこちらに信号が聞こえる。関東圏の局だけでなく中国や九州の局も聞こえコールバックをもらえた。
掌に乗る小さなリグをモバイルバッテリーで駆動し、狭い場所に伸展したワイヤーアンテナでもさまざまな局と出会うことができた。普段は局数の多い7MHzが中心になってしまうが、このようなイベントでは伝播状況が良ければ高いバンドでの安定した交信ができる。アマチュア無線の楽しさを味わえたひと時であった。因みに沖縄や小笠原との交信は出来なかったが10エリアすべてと交信できた。また、相手局の出力は1局がP,それ以外すべてがMの局であった。