XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ストレートキー ナイト

電鍵を使った交信もいいものです。

 

 A1Clubでは電鍵のみを使ったコンテストを開催している。普段はエレキーやバグキーなど自動的にモールス符号を生成できるパドルを使うことが多いのだが、たまには電信の原点である電鍵(ストレートキー)を使って交信しようというイベントである。手の動作によって電流の断続を制御してモールス符号を生成する。どのようにリズミカルに判別のしやすい符号が出せるかは習練によって得られる技能である。その習熟にこそ電信の面白みがあるとも言える。
 このイベントではRSTのレポートと共に電鍵の名前などの文字列を交換する。6文字を1として、それよりも字数が少ない5文字では0.8、4文字では0.6と得点が少なくなる。逆に7文字では1.2、8文字では1.4と高い得点になる。 総得点=(各バンドの交信得点の合計)×(各バンドのマルチ数の合計)×(S-KEY 係数)となっていて、交信得点=(1交信毎の得点)×(R-KEY 係数)であるので、長い文字列の相手局と交信し、自局も長い文字列を使うことが高得点の秘訣となる。しかし文字列が長くなるほど確実なモールス符号の送受が必要で、オペレーターの技能が試されるのだ。
 このイベントにはQSYルールというユニークな仕掛けがある。普通のコンテストではある周波数でCQを出し続け、呼びかけてくる局と交信することで得点を稼ぐのが普通である。この場合、その周波数は独占されてしまい、他の局にとってはCQを出す周波数を見い出すのが難しくなる。また、その周波数で長時間運用するので、その局のコンテストナンバーは繰り返し送信され、自局との交信で聞き逃しても容易にコンテストナンバーを確認することができる。それに対して、QSYルールではCQを出した局は次のCQを出すためには1kHz以上離れた周波数を使わなくてはならない。周波数の独占はできないのだ。そのため、CQに対して応答して交信した局が、次にその周波数でCQを出すことが多い。その周波数での運用局が次々に替わっていく。もし、コンテストナンバーを聞き逃したら、相手局は異なる周波数に移動してしまうので、その交信の中で確実にナンバー交換を行わなければならない。ここでもモールス符号の運用技能が試される。
 
 イベントということで多くの局がお空に出てくるので、私はある試みをした。自作した直径70cm程のMLA(マイクロループアンテナ)と2WのQRP機でどの程度得点が取れるかというものだ。7MHzと3.5MHzの設備を用意し、数時間イベントに参加した。微弱な電波で相手をしてもらうには、こちらの電波が届きそうな局に呼びかけをする。しかし、競合して呼びかける局がいると負けてしまう。そこで通常ならタイミングを見ながら何度も呼び掛けをするのだが、このイベントではそれができない。相手局がどんどん動いてしまうのだ。呼びかけをしても振られっぱなしである。また自分からCQを出しても微弱電波では気づいてもらうことが難しい。バンドの中を動き回りながら、呼びかけも繰り返したのだが、結果は惨敗であった。このようなイベントではある程度の出力が必要なのだろう。
 人間が直接解読するデジタル通信、モールス符号を使った通信技能を後世に残していくためにも、このようなイベントはさらに盛り上げていきたいものである。