XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

カラスビシャク

見落としがちだが、身近に多様な生き物が。

 3年ほど前だろうか、散歩をしていて奇妙な植物を見つけた。マンションの植栽の中に顔をのぞかせていたのだが、マムシグサのような、ウラシマソウのような筒状になった穂が出ていた。上に被さる部分が折れ曲がったような小さな花穂である。3子葉になった卵形の柔らかそうな葉に囲まれていた。ちょうど春の終わりのころだった。その次の年にも同じ場所に残っていた。気になったので調べてみると「カラスビシャク」という雑草と判明した。
 形が似ているが役に立たないという意味から「カラス○○」とか「スズメ〇〇」と名づけられた植物がある。カラスノエンドウ、カラスムギ、カラスウリ、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、スズメノエンドウ、スズメノヒエなど日頃よく目にする雑草である。このカラスビシャクも柄杓に似た形から名づけられたようだ。各地に自生していてヘソクリ、ハンゲ、ヒャクショウナカセ、カラスノオキュウなどとも呼ばれることがあるという。ヘソクリという名はこの草の根は「半夏」という漢方薬の原料になるそうで、小遣い稼ぎになるというところに由来するという。

 今年も出ているかなと散歩の途中で見に行ってみたら、花穂の部分が摘み取られて近くに捨てられていた。面白い形をしているので誰かが摘み取ったのだろう。こんな雑草に興味を持った人がいたのだ。仏炎苞という名前がついたこの花穂は不思議な形をしている。緑色していて小さな穂なので周りに溶け込んで見つけにくいのだが、一度見つけてしまうと気になる存在なのだろう。摘み取った人の気持ちもわかるような気がする。
 身の回りにはたくさんの植物があるのだが、あまり関心を持たれていない。カラスビシャクのように気になる形をしていると名前を調べたり観察したくなるものだが、そのほかのほとんどのものは「雑草」と一括りにしてしまい、関心を持つことも少ない。しかし、その一つ一つはしっかりと個性を持っていてじっくり眺めると新たな発見がある。

 先日近くの公園を散歩した。タンポポが咲いていたのだが、いつも見慣れたものと何か違っている。花の形が平たく感じるのだ。もしかしてと、花頭の下の総苞片を確かめてみた。反り返っていれば広く分布している外来種であり、閉じていれば在来種であると言われている。しっかり総苞片が綴じているので在来種のようだった。これまで見かけるタンポポ外来種帰化種)がほとんどだったが最近は在来種が息を吹き返しているという。
 身の回りにもたくさんの生き物がいて、その中で私たちの生活があるのだが、得てして人間中心の視点になってしまい周りの生き物に気づかないことが多い。植物だけでなく虫や鳥、動物たちもすぐ近くで暮らしている。季節の移ろいを教えてくれるたくさんの生き物と共生していることに驚く。

 足元に小さな花が咲いているのを見つけると、ホット気持ちが和むことがある。気持ちにゆとりを持った生活をしたいものである。