XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ルスカス

ルスカスという名の植物

本格的な冬型の気圧配置になり、日本海側は雪が降っているが、太平洋側は晴れである。寒さも厳しくなり、今年初めて氷が張り、霜柱ができていた。
陽射しがあると暖かく感じるのだが、日陰にはいると空気の冷たさが直に迫ってくる。空気も乾いてきたのでのどの調子がおかしいこの頃である。

いただいたアレンジメントがあったのだが、だんだんに花がしおれていき、一本一本と抜き去っていった時、最期に残ったのがこの緑の葉である。少し肉厚で、緑が鮮やかな葉である。萎れることのなく、元気な様子なのでそのまま花瓶に挿しておいた。すると、花が咲いたのだ。花の直径は8ミリ弱ほど。黄緑色の大小の花びら6枚に囲まれている。葉の裏の真ん中に下向きに咲いている。紫色でかわいい花である。別の葉には葉の表側に同様な花が咲いている。
ハナイカダ」という植物はこれまでも見たことがあるが、葉の様子から異なる種のようだ。なんという植物なのか調べてみた。

同様の疑問を持った人も多いらしくいくつかのサイトが見つかった。この植物自体、葉の美しさと日持ちの良さから切り花やアレンジメントでよく使われているようだ。
名前はルスカス、別名・ルスクス、ヒポフイルムとも呼ばれる。ユリ科・ルスカス属とのこと。マデイラ島ポルトガル)からコーカサスにかけて原生しているようだ。国内で流通しているものが輸入品なのか国内生産されているのかは不明だが、流通量は増えているようである。
さらに調べると、葉のように見えるものは、枝が変化したもので「葉状枝」と言い、本物の葉は退化して葉状枝の根元にある鱗片だそうだ。葉から花が咲くというので不思議に思っていたが、茎であるとすれば納得がいく。それにしてもなぜ茎が葉のような形になってしまったのかは不思議である。逆に花が咲くから茎だという理屈なのだろうか。

自然界の造形は一筋縄ではいかないことがある。同じ個体が成長に従って雄から雌に変化したり、一つの個体の中に雌雄同体の性質を持っていたり、花だと思っていたら萼(がく)であったり、葉が棘(とげ)に変化していたりとさまざまである。山中教授がiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞したが、細胞レベルやもっと小さなレベルでの研究が進むとこれらの自然の造形の妙味に近づいていけるかも知れない。楽しみであると同時に神の領域に近づく畏怖を感じるのである。

それでも、未知な不思議な植物との出会いは楽しいものである。