XRQ技研業務日誌

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少年法

shig552012-12-13

少年法は成人に適用される刑法と刑事訴訟法の両方の内容を含んでいるという。少年が自己決定力や判断力において未熟であることを鑑みて、また未成年者の人格の可塑性に着目して刑罰としての性格よりも保護育成という性格を色濃くしている。
少年が犯罪を犯した場合、親による指導育成に問題があり十分な成長ができていないことから犯罪が生起したと見なす。したがって、犯罪そのものよりも、その犯罪を犯すことによって露呈した少年の課題を洗い直し、国が親に代わって指導教育を行うことを目指しているのである。
この考え方の根底には、社会秩序の維持、公益があり、ひとりひとりの人間の生き方というよりも社会という集団をいかに維持していこうかと言うところに視点が向けられている。
14歳以上、20歳未満の少年が犯罪を犯した場合、少年法の適用になるのだが、成人の刑法や刑事訴訟法と異なるのは、更生保護という面が強く、検察庁からの起訴ではなく家庭裁判所による非公開審理が行われることである。ただし、事犯の重大さによっては逆送という、家庭裁判所から検察庁へ送られ一般の刑事事件と同様な審判が行われる道も開かれている。家庭裁判所の審理により処遇が決定されるが、犯罪の発生を契機に露見した少年の課題発見に重点が置かれるため、少年鑑別所において心理・医学・社会的などの鑑別が行われることがある。その後、16歳までの少年は少年院に、それ以上の年齢の者は少年刑務所に収監される。仮出院したあとは保護観察所の保護管や保護司によって保護観察が継続される。
14歳未満の場合には虞犯少年触法少年として家庭裁判所ではなく児童相談所児童自立支援施設において対応されている。ただし事犯により、おおむね12歳以上の場合には少年院送致も規定されている。
そして、少年審判は非公開であり、審判に付された少年についてはその個人を特定できるような情報の報道は押さえられているのが少年法の特徴である。

少年法は将来ある少年を保護育成することを念頭にした法制度であり、社会の秩序維持を目指したものである。しかし、犯罪被害者としての立場でこの法律を見た場合、被害は成人による犯罪と同じであっても加害者に対する対応が保護育成を基盤としていることに釈然としないものを感じるのもわかるのである。
法律は国民の幸福追求の基になるものであり、法益は社会秩序の維持だけでなく、個々人間の紛争解決に役立つものであるべきだと考える。民法などさまざまな法律は個人や法人のトラブル解消に役立っているのも事実である。しかし、これらは正常な判断力を有する個人、法人を対象としたもので、少年や障がいのある人などは対象外となる。その場合、被害者は置き去りにされてしまう畏れがある。

生育途上である少年の過ちは正し、健全育成に努めなくてはならない。これは親だけでなく社会全体の役割である。だからこそ、その少年によって起こされた犯罪の被害者に対して社会は十分な支援を行い、社会全体でその被害を受け止めるよう努めることが必要だと思う。そして、少年の更生保護についても被害者の視点を踏まえて、「懇切を旨として和やかに行うとともに、非行のある少年に対して非行について内省を促すものとしなければならない」と改正が行われた。
「やり直しのきく社会」を作っていくと共に、家庭や学校などさまざまな場面で規範意識をもち、相互の生命尊重、人権感覚を高めることが犯罪防止になっていくのだと思う。

参考 後藤弘子 「犯罪被害者と少年法明石書店