XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

カントウタンポポの群落をみつけた。

カントウタンポポは苞が開いていない

 なかなか春らしい春にならない。昼間暖かくても夕方になるとコートが欲しくなる寒さである。雨が降れば暖かい雨ではなく、みぞれ交じりの雨になる。こんな季節が行ったり来たりの日々が続いている。季節の移り変わりが迷っているようである。
 この寒さのお陰?で花々は寿命が延びているようだ。さすがにソメイヨシノはもう青々とした若葉に覆われているが、八重桜はまだ満開で、花と同じような色の葉を出し始めている。チューリップも長く花を保っているようだ。ネモフィラの青いかたまりもずいぶん長い間きれいな色を保っている。

 先日、車を走らせ、近隣の県の農産物販売所に出かけた。そこは地域の農家が作物を持ち込み、新鮮な葉物野菜が手にはいるところである。天候の不順で野菜が値上がりし、スーパーなどでは規格外野菜も売り出されているようだが、ここでは瑞々しい野菜が手に入る。もう少し近ければ毎日でも訪ねたいところなのだが、残念ながら高速道路料金が馬鹿にならないところである。
 さて、ひとしきり買い物を済ませ、隣にある用水池の周りを散策した。池の周りは林に囲まれている。大きな鳴き声で「チョットコイ、チョットコイ」とコジュケイが鳴いている。池の一方だけが開けていて草原になっている。そこに輝くような明るいタンポポが咲いていた。あまりにきれいなので写真を撮り、いろいろな角度から撮影していた。すると、下側からのアングルで撮った写真に驚いた。総苞の部分が短く、めくれていないのだ。セイヨウタンポポはこの部分がめくれている。どうやらカントウタンポポのようである。
 普通タンポポの花と言っているのは「頭花」というもので、「舌状花」が200ほども集まったものだそうだ。その舌状花をまとめているのが総苞で、ここがめくれるようになっているのがセイヨウタンポポである。セイヨウタンポポは受粉をしなくても種を作ることができるが、カントウタンポポでは別の株からの花粉を受け取らないと種ができないので、群落としてまとまっていないと生育しにくいと言われている。
 ここの群落もたくさんの株が寄り集まり、一斉に花を咲かせている。タンポポは光を受けて花を開き、光りが弱くなるとつぼませる就眠運動をすることでも有名である。陽射しをいっぱいに浴びて、めいっぱいに舌状花を開いているのだ。一日ではすべての舌状花を広げることができず、二日掛かりほどで真ん中まで咲かせることができる。全部が開き終えると緑色の総苞片に包まれてしばらく休み、綿毛へと変身する。
 さて、ここのカントウタンポポだが、辺りを調べてみるとセイヨウタンポポの株も見つかった。こちらは株が分散している。中には交雑種と思われる、総苞が少しだけめくれている株も見られた。この狭い草原の中でカントウタンポポセイヨウタンポポの勢力争いが行われているようだ。
 心情的にはカントウタンポポを応援したくなる。セイヨウタンポポは明治の終わり頃、野菜の一種として北海道にもたらされたものが野生化したという。タンポポという名前も刀の手入れをするときの「タンポ」という道具に煮ているというので「タンポ穂」と付いたという説や、頭花の茎を裂いて水につけると反り返って鼓のような形になるので「ツヅミグサ」といわれツヅミの音が「タンポンポン」なのでタンポポになったという説などいろいろある。
 
 カントウタンポポの群落、野の花は野の花としてそっとしておくことにしよう。また来年もしっかりと生き延びて花を咲かせてくれることを願って。