XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

公園を歩くと

池の水が茶色に変わった

 毎日通勤に通っている公園。蝉の声が身体中を包み込むように盛大である。どれだけの数の蝉が木々の中にいるのだろう。でも八月の後半に入ると、少しだがその声も和らいできたように感じる。事実、公園の歩道には蝉の亡骸が目立つようになってきた。何気なく数えてみたのだが、通勤途上だけで30数個もあった。特に気をつけて探したわけでもなく、普通に500m程の公園を歩いて目についた数である。ある日には48匹を数えたこともある。種類も最初はアブラゼミだけだったがミンミンゼミやヒグラシの亡骸も見かけるようになってきた。
 これも食物連鎖に組み込まれ、小さな虫たちのお腹に行くことになるのだろう。路面に落ちていた蝉の亡骸が一晩過ぎると小さな粒の固まりになっている。どんな生き物が分解しているのかは定かではないが、蝉の形は全くなくなっている。砂粒を少し大きくしたようなものが小さな山を作っている。これが土と一緒になればまず見分けることはできないだろう。これが土に還ると言うことなのかとしみじみと見てしまった。
 一方で増えてきたものもある。毛虫の糞だ。路面に小さな黒いつぶつぶが目立つようになってきた。葉の陰で毛虫たちが日々成長しているのだろう。食うものと食われるものの自然界のバランスが保たれているのならよいのだが、一種類の生き物の大量発生にはなにか薄ら寒いものを感じるのだ。
 そんなある日、雨が降った。そして、路面が劇的な変化を見せたのだ。一面が茶色に染まっている。ペンキを塗ったようにあたりの色が変わっている。しかし、染まっていない部分もある。気をつけて見てみると、桜の木の下が染まっていて、それ以外の木の下はあまり染まっていない。そして、路面を覆っていたあの黒いつぶつぶが消えていた。最初はどうしてこんな色が出てきたのかわからなかった。
 何が起きたのか不思議だった。そして、気がついた。どうやら毛虫の糞が雨で溶け、その色が広がったようなのだ。その後の数日間、天候のはっきりしない日が続いた。雨の毎に茶色の水が流れ出し、近くの池の水の色が変わっていく。ビールの色からウイスキーの色へ、そして黒みを帯びた色への変化していった。同時に路面が滑り易くなりねっとりとした物質が靴底に付くようになってきた。
 アメリカシロヒトリアメリカ白火取)は北アメリカを原産地とし、終戦アメリカ軍の軍需物資について渡来したという。食草はサクラ、ヤナギ、カキ、コナラ、リンゴなどで、仮に刺されても人体には影響はなく、食害による影響も少ないようだ。(Wikipedia)
以前は殺虫剤による対応をしていたが、最近は殺虫剤配布による悪影響の方が心配され、薬剤の散布は行われていないという。
 今年の天候がこの虫の繁殖に適していたのだろうか、大量発生したようである。思いも掛けない出来事を起こしてくれたものである。雨によってこの茶色の物質が土壌に吸い込まれ、植物の養分になるのだろうが、極端な出来事に驚かされてしまった。

 各地で集中的な豪雨が降り、広島では複数箇所の土砂崩れが発生し、甚大な被害が出ている。自然現象は様々な要因が複合し、互いに綱引きをしながら落ち着きどころへ向かって収束していく。どこかで大きな変化が起きると、その変化を平衡しようとさまざまなところに波及して大きな揺れが続く。早く収まってくれることを願ってやまない。