石神井川は小平市のゴルフ場内にある湧水を源流として、西東京市を経て練馬区に入り、さらに板橋区、北区を経て隅田川に合流する一級河川である。
源流部は暗渠化されているが、小金井公園でその姿を見せ、西東京市付近では細い流れである。練馬区に入ると三宝寺池や富士見池その他の湧水が合流し流れが大きくなる。
私が子どものころは川の周りは水田が広がり、田に水を引くための小川が幾筋も流れていた。土手から川に向かって洗い場という石組みの場所があり、大根などを洗っていた。その後、都市化が進み、周辺に住宅ば増えると川に汚水が流れ込み、悲惨な状況になってしまった。自然の流れがどぶ川になってしまった。公害などとともに社会問題となり、改修が進められた。下水道が整備され、護岸工事が行われてきた。
すぐ手の届くところを流れていた川は、高いブロックの護岸によって深いところを流れるようになってしまったが、澄んだ流れの中に水草がそよぎ、カモなどの水鳥が集まるところになっている。
この川べりが私の散歩道である。川に沿ってサクラが植えられているので、その季節には枝が川を覆い、見事な風景になる。散った花びらが川面を流れる花筏の風情は格別である。シジュウカラ、ジョウビタキ、ムクドリ、ウグイスなどいろいろな鳥たちが姿を見せる。ハクセキレイや時にはキセキレイを見かけることがある。川に沿って飛ぶカワセミの輝くような青色の背中も見られる。カルガモはほぼ通年見られるが、オナガガモ、コガモ、マガモ、カイツブリ、ハシビロガモなど渡りの途中で立ち寄るものもいる。アオサギやコサギ、チュウサギが流れの中の餌を探している姿はよく見かける。
先日の散歩の途中、中洲の石の上で羽を広げているカワウを見かけた。水深のある所を潜りながら狩りをしている姿はよく見かけるのだが、こうして羽根を乾かしている姿は珍しい。護岸の上からだが、近づいて写真を撮っても羽を広げたままである。ステージの上で衣装を披露しているファッションモデルのような動きである。野鳥の公園などで見かけた、杭の上に留まり羽を広げる習性があるのは知っていたが、こんな小さな川の中州で、しっかり石を見つけてその上で羽を広げている。なんともほほえましい姿である。
都市の中の河川はゲリラ豪雨など、最近の激しい気象に対処し水害を防ぐという大事な役目を持っている。道路の下に巨大な導水路が作られ、また遊水地を整備するなど対策がとられている。しかし、平時においてはこうした動植物の暮らす場として、私たちに安らぎを与えてくれる場でもある。散歩の途中、枝先から水中に飛び込んで小魚を捕えるカワセミや、潜ってから思いがけないところに顔を出すカイツブリの様子をのんびり見ているのは楽しい。身近な自然を大事にしていきたいものである。