XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

児玉の百体観音堂

児玉のさざえ堂

 観音菩薩は観世音菩薩、観自在菩薩、救世菩薩などともいわれ、般若心経にも一番初めに出てくる仏様である。この仏様は普門示現として三十三のお姿で現れるという。
 この仏様の御利益を求めてたくさんの霊場がある。秩父三十四霊場、板東三十三霊場、西国三十三霊場は有名である。これらを合わせて百の観音様を祭ったお堂があるというのでお参りに行った。
 関越道本庄児玉インターから30分ほどにある平等山宝金剛寺成身院百体観音堂である。「児玉の百体観音堂」「児玉のさざえ堂」と呼ばれ、遠くに浅間山を望む高台にある。
 外見は二階建てのお堂だが、「右繞三匝(うにょうさんぞう)」という仏教の、尊者に対する最高の敬礼ができるよう特殊な構造になっている。このお堂の中心に聖観音像が置かれていて、その周りを右回りに三回巡るように三階構造になっている。それぞれの階を螺旋状に階段で結び一階には秩父三十四観音札所の本尊写しの観音様が納められ、二階には板東三十三観音札所、三階に西国三十三観音札所の観音様が納められている。
 このお堂は成身院というお寺にあるのだが、このお寺は無人のようで、近くにある「本庄市観光農業センター」の方が管理されている。電話をするとすぐ係の方が来てくださり、このお堂の鍵を開けて成り立ちについて説明してくれた。
 天明三年(1783)の浅間山大噴火が契機になっているとのことである。この噴火については鎌原観音堂の悲劇については聞いたことがあった。火砕流によって旧鎌原村が飲み込まれたくさんの犠牲が出たこと、そして吾妻川洪水や天明六年の利根川大洪水など大変の被害が出たということである。江戸や銚子にまで火山灰が降り注ぎ天明の大飢饉に拍車を掛けたことも記録に残っている。この児玉の地は利根川が近くに流れているので洪水などで犠牲になった人たちが流れ着いたようである。その人たちを弔うために建てられたお堂だという。
 それぞれの本尊写しの観音像は人々の寄進によって納められているようで一体一体にその名が記されている。千手観音や十一面観音、馬頭観音などさまざまな姿である。一つ一つをお参りしながらお堂を巡ると自ずと心安らかになる。三階の天井には極彩色の絵が描かれていた。
 荒ぶる自然と人々がどのように向き合ってきたのかを知る機会ともなった。