XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

モールス体験

shig552017-09-05

 大きなイベントがあり、「モールス体験コーナー」というところの手伝いをした。幼児から大ベテランまで多くの方が来場してくださり、電鍵を触って「電信とはこういうものか」と体験してもらった。
 高校生くらいの子から「電信ってどんなところで使っていたのですか」と質問を受けた。昔、電話が普及していなかったころ、遠く離れた人に急用を知らせるには電報しかなくて、その電報を送るのに使っていたと説明すると、「電報ってなんですか」「映画の中で見たように思うのですが」との反応。電報も過去のものになっていることを改めて認識した。一人ひとりが通信機器を持つ時代になり、「モールス通信というものが、かって使われていた」と記録に残される時代になってきている。
 来場された方で「免許は持っている」「モールスは知っている」、でも「CWを運用したことはない」という方が何人もいた。知識としてモールス符号を知っていても、使うことができないようで、実際、電鍵を操作しても符号として認識できていない場合が多かった。無線従事者の国家試験では「モールス符号の理解」という扱いになり、実際に使用することなく免許が取れる状況を反映しているのかも知れない。
 
 「モールス符号ユネスコ無形文化遺産へ」と言うことは、本に書かれた記録として残すことではないと思う。”モールスを使って通信する”ということを伝承していくことだと考える。
 来場した子どもたちにも電鍵で遊んでもらった。モールス解読器をセットし、打鍵した符号を解読し液晶画面に表示するようにした。子どもたちに符号を音で聞いてもらい、それが文字として表示された後、「今のと同じようにできるかな?」とし向けると、何回か試すうちに符号が表示された。CATとかDOGという文字が表示されると、大喜びである。耳で聞いて、それを真似ることで符号になっていた。
 しかし、「免許はもっている、符号も知っている」という人が打鍵すると、EとTの羅列になることが多かった。短点と長点の組み合わせとして符号をわかっていても、短点と長点の間のスペースを含めた一文字としてまとめることができない。また、文字と文字の間が空いてしまい、語としてもまとまりを作れない。
 耳で聞いていると、何となくわかってしまう符号でも解読器を通すことで厳密に長・短点の長さ、長点と短点の間隔、文字と文字、語と語の間もはっきりと見ることができる。
EとTの羅列であった人も、何度も音でその符号を聞いてもらうようにすると、徐々に解読器に文字が表示されるようになってきた。知っていることと、使えることの間には大きな壁がある。この壁を乗り越える最初の一歩が難しいのだと思う。
 ”CWデビューしませんか”と呼びかけているのだが、最初の一歩に躊躇している人が多いようだ。特別局や移動局に呼びかけて599の交換から始めるのも在りかと思う。スケジュールQSOという手もある。モールス符号を残すのではなく、”モールス通信”を継承していくようさまざまな取り組みが必要なのである。

 老若男女、さまざまな人がモールス体験コーナーを覗いてくれた。電信の楽しさをもっともっと広めることを続けていきたい。