XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ふたご座流星群

日の出と共に赤みを増した雲

 ふたご座流星群の極大日は15日03:00頃と予想されていた。今年は月齢が3ということで月の明るさに邪魔されることのない最良の条件だという。天候さえよければHR80という出現が楽しめるようである。
 ちょうど13日から14日にかけて旅行が入っており、ことによれば、その最中見る機会があるかも知れないと考えていた。しかし、旅行当日の天気は曇りから雨。出発の時には傘の必要はなかったのだが現地に着くと傘なしでは歩けない状況。宿に入ってからも小降りになってきてはいるものの星空が見られる状況ではなかった。
 案内された部屋は東側に大きな窓があり、海の眺望が広がっていた。晴れていれば島々の姿が見られるのだという。しかし、雲に覆われ、白浜に打ち寄せる波の様子しか見えない。このロケーションなら、もし晴れてくればすばらしい夜空のスペクタクルが見られるはずと残念に思う。
 早々に床に入り、夜中に目が覚めると窓の外に向かいの島の光が見えている。微かな期待を胸に起き出して、窓際に座椅子を用意し観測態勢に入る。雲が流れ、ときどき星が見え始めるが直に見えなくなる。雲が薄くなってきているので、ことによるとチャンスが訪れるかも知れないと、ゆったりした体勢で窓に向かう。通常なら屋外で厚着をし寒さに堪えながら観測するのだが、今回は空調の効いた室内でゆったりと体を横たえ、空を眺めることができる。最高の状況だ。これで雲が取れてくれれば・・・と願っていると。
 その瞬間が訪れた。星たちが瞬きだしたのだ。たくさんの星が見えだした。普段、東京では見えない暗い星も見えている。視野の端に微かな光が走ったような流星の気配を感じる。天頂から白い明るい光が走った。きれいな流星である。赤みを帯びた光の帯が長く尾を引きながら流れていく。連続して出現するわけではないが他の星たちを圧倒するような明るさである。また白い光が流れていく。そしてまた一つ。しかし、また雲が流れてきて星たちを隠してしまった。長くは続かなかったが、感動し満足感に満たされたひとときだった。
 一度床に入り、夜明け前に露天風呂に入った。まだ流星が見えるのではと期待するが、風呂の中からでは周囲の明かりに邪魔されているようである。部屋に戻り、また窓の前の座椅子に陣取る。空は雲に覆われている。高層の雲がだんだんに白く見えるようになり速いスピードで流れていく。低層の雲は黒く見え、ほとんど動いていない。そのとき突然に目の錯覚が起きた。空に水墨画の海が出現したのだ。大きな黒い岩礁に白い波が打ち寄せている絵である。遠近感が麻痺したのか、大海原の広大な景色が広がっている。
 空が明るさを増してくると全体が平面的になり、その名画は見えなくなってしまった。そして雲が赤く染まり、日の出を告げている。
 すばらしいロケーションの部屋に泊まることができたことに感謝したい。大きな窓のお蔭で一つならず二つも自然の偉大な営みに触れることができた。
 本来の目的とは別に、大きな感動を味わうことのできた旅であった。