XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

金環食

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承歴4年11月1日(ユリウス歴1080年12月14日)以来、次回はグレゴリオ暦2312年4月8日、という人の一生よりも長いスパンで起こるという広範囲で観測可能な金環日食であった。このときに巡り会えたことをありがたく思い、今日を迎えた。
 最近では1987年9月23日に沖縄付近で、2009年7月22日には屋久島付近で金環日食が見られた。次回は18年後の2030年6月1日北海道付近で見られるとのことである。だが、今日のように日本の太平洋側を縫うように金環食が見られる地域があるのはたいへんに稀なことのようである。

 西の方から大きな雲のかたまりが出てきて天気予報では曇りがちとのことだったので、朝一番に空の様子を見た。雲は多いものの青空も見える。テレビでは各地の様子を伝えている。日本よりも先に日食が始まる台湾からの中継では雲が多く太陽が望めないという・・・。
 食事の準備をしながらも気が気ではない。ピンホール投影板と遮光プレートを用意し、窓から空の様子を確かめる。6時19分、日食が始まり、丸く映っていた投影板の太陽の形が欠け始める。しかし、雲が流れときどき太陽の姿が見えなくなる。周りの明るさは普段と変わっているようにも思えない。食が進み三日月型になってきたころ、木漏れ日の形が目立ってきた。普段は気にしていない木漏れ日だが、部屋の中にも、家の壁にも木々の葉の間から漏れた光がたくさんの三日月を作っている。三日月の光がそこここに揺れ動く様子は感動ものであった。
 7時32分、金環食が始まる。太陽と月の動きは思ったよりも早くベイリーの数珠といわれる月の凹凸からできる現象は見ることはできなかった。それでも投影板にもリングの光が映っている。そのうちに雲が流れてきて投影板の光は消えてしまった。危険だと言われていたのだが太陽を見上げると雲を通してはっきりとしたリングが見えている。これなら写真が撮れそうだとカメラを向けた。自然のフィルターを通しての観察である。
 金環日食の状態ではおよそ94%が覆われた状態だと言うが、あたりはそれほど暗くはない。リングになった状態の太陽でもこれほどの明るさを持っているのだ。太陽の光の強さを改めて感じた。「蛍光灯の形が見えるような遮光プレートは危険です」と事前に広報されていたがこんな強い光を見ることの危険性を再認識する。
 各地で観測会が行われ、洋上や雲の上の飛行機での観測ツアーも行われたとのことだが、自宅からこの天体現象を見ることができたことの幸運に感謝したい。真っ黒な月、新月が始まった。大きな自然の運行のなかで私たちの生活は続いていく。