XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

おもちゃの修理 2

shig552008-11-14

やっと青空が見えた。このところ低い雲に覆われて暗鬱な日が続いたが、やっと小春日和が戻ってきた。身勝手なことだとはわかっているが、天気が悪いと気分まで滅入ってしまう。すっきりとした青空になると心も明るく感じる。
富士山かきれいに見えたので写真を撮る。早朝は微かに赤みを帯びた姿だったが、日が昇るにつれて白さが増してくる。もう中腹まで雪に覆われているようだ。去年も同じ日に写真を撮っていた。ここから富士山がきれいに見えるのは一年のうちでもこの時期しかないようだ。

おもちゃの修理はおもしろい。
ラジコンのお使いブル公というおもちゃの修理の依頼を受けた。タイヤは回るのだがコントロールが利かないということだった。品物を送ってもらい点検するとコントロールボックスのスイッチの接触不良が見つかった。スイッチを交換し、本体の電池ボックスを調整すると、走り出した。コントロールボックスの操作で左右に方向変換することも確認できたので、修理完了として返送した。
すると、到着してまもなく「スイッチが脱落してしまった。動作もおかしい」という連絡をいただいた。輸送中に事故でもあったのかと心配しながら再度送ってもらうことにした。

そして、再度点検してわかったことがある。このお使いブル公というネーミング通り、ただ走るだけでなくものをくわえて持っていくという複雑な動作をするおもちゃだったのだ。前回は足回りの機構だけしか見ていなかったが、今回全体を分解し機構の解明を行うとよく工夫されたコントロール機構になっていた。今ならばマイコンでプログラムを組むような動作を、機械的に行っていた。ドラムに銅板を巻き付けてあり、そこに接片が接触するように仕組まれている。ドラムの銅板が細工してあり、6回路の接片が導通したりしなかったりと変化する。この組み合わせで3つのモーターを制御し、さまざまな動作をさせているのだ。
動作が不安定であった原因は、このドラムに接触する接片を支える部分が経年劣化により変形し、接片を支えられなくなっていたのだ。テンションを掛けられていた部分なので劣化も早かったようだ。触るとぼろぼろと崩れてしまった。樹脂で固めればと思っていたが、それどころの状態ではない。仕方なく、接片を固定する部分を新たに作り直すことにする。エポキシ基板を加工して接片を挟み込んで固定した。
これでモーターは動くようになったが、動作音はしても本体は動かない。別の故障箇所があるようだ。よくよく見ていくとモータの軸に付いているピニオンギアがおかしい。滑ってしまい空回りしている。取り出してみると縦にひびが入り緩んでいる。エポキシ接着剤で固定してみるが、少し動いただけで耐えられなかった。交換したくてもそのような部品の手持ちがない。そこでネットでいろいろ検索しお店を探した。幸い近くの駅にそれを扱っていそうな店を見つけた。街探検である。地図を便りに街を歩き、その店を見つけた。「こんなところにこんな店があったんだ」と新たな発見と驚きである。ピニオンギアを手に入れ、早速取り付ける。全体を組み立て直し電源を入れると大きなうなり音とともに動作を始めた。左右に進行を変えるだけでなく、左右のボタンを同時に押すと口を開いて物をくわえる動作が始まった。2つしかないボタンに両方同時に押すという操作で、新たな動作をさせていることを発見する。ドラムに銅板を貼るというプログラムで動作させているのだ。
おもちゃの修理ではこのような工夫を見つけることが出来るのもおもしろさの一つである。おもちゃという販売価格の制限された製作の中で、思いもよらないようなローテクを使って動作させているアイディアには驚かされる。山に登るには一つの道だけではないことを見せてくれる素材である。

おもちゃの修理では、取説がない場合が多く、そのおもちゃが本来どのような動作をするものなのかわからないまま修理を行わなければならない。今回のように思い込みから機能の一部しか動作していなくても修理完了としてしまうことがある。知恵と工夫の固まりであるおもちゃに、これからも挑戦していきたいものである。