XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

腕のロボットを作る

shig552008-12-18

 すっかり冬の装いになった。きれいな紅葉を楽しませてくれた桜も葉を落とし、メタセコイアからはかさかさとチョコレート色の葉が散っている。空の青さが冴えてきて朝の空にかかる月の白がが増している。
夕暮れが早くなり、日が沈んだ後地平線の赤く染まっているのがきれいに見られる。もっとも地平線といっても家々の連なるところであるので、赤と黒のグラデーションの中にその建物のシルエットがある景色だ。水平線というよりも家並み線というのだろうか、空と地上の接線である。

 ロボットの動きを知りたくて腕だけのロボットを組み立てた。市販のキットを組み立てたので2時間あまりで完成である。指が開閉し、手首が回る。腕が上下に動き、肩も上下動する。そしてそれらを支える台座が回転する、5つの関節を持ったロボットである。
 組み立て説明書と首っ引きで部品を選び、所定の位置に挿入してモーターを入れ、一つずつの関節が操作することを確認しながら組み立てを進めた。よくできていると感心したのは、腕や肩の部分にクラッチが組み込まれ、大きな力が加わった場合、そこでスリップをしてモーターに過負荷がかからない構造になっていることだ。そのほかの関節部分にもギアが空回りする工夫がしてあり、柔軟な構造になっている。
 とりあえず全体を組み上げたところで、コントローラを使って動かしてみる。一つ一つの動きはまったく機械の動きである。上がる・下がる・回転するとモーターが動いていることがそのまま現れている動きである。どのスイッチを入れるか、どのタイミングで入れるか、手動での動作ではなめらかな動きをさせるのは難しい。そこで、マイコンでコントロールし、あらかじめ入力したように5つの関節を複数同時に動かすようにセットした。
 複数の動きを同時にさせることで全体の動きがなめらかになってきた。手招きするように腕を下げつつ肩を上げる、腕や肩を上げながら台座を回転させると腕全体がちょうど旗を振るような動きになる。いくつもの動作が複合することで人間が普段やっているような動きになる。
 このような簡単なロボットを作るだけでも、生物の動作がいかに複雑に行われているのかが見えてくる。さらに、このロボットには大事なものが足りないことに気づいた。感覚機能である。動作を始めるとき、自分自身の状態がどのようになっているのか認識できないのだ。それぞれの可動部分が空間座標の中でどのような位置関係になっているのか把握していない。コントローラから動作の指示が来るとその位置から動くので、周りのものにぶつかったり、床をずっと押している等のことが起きてしまう。マイコンで操作するにしても、まず、初期位置を考慮してからスタートさせなくてはならない。動物ならば周りの状況や自分自身の状況を把握しながら動作することが出来る。動物は感覚機能を持っているから出来る動きなのだ。
 もう一つ位置情報だけでなく、外からの情報も大事である。指で物をはさむとき強くはさみすぎると挟まれた物が破損してしまう。緩すぎると挟むことが出来ず掴むことにはならない。どのくらいのリターンがあるのか、私たちは指の感覚で柔らかな桃も、卵でも壊さずに持てるよう微妙な力加減を調整している。
この腕型ロボットではクラッチを使うことで過負荷になった場合のはモーターが空回りすることで、この調整に近いことをさせている。機能的のは同じようなことが出来るようになっているが、その精度は雲泥の差である。動物のコントロール機能のすばらしさがここからもはっきり見えてきた。
 おもちゃのようなロボットキットではあるが、実際に組み立て、動作させることで自分がふだん何気なくやっていることの複雑で巧妙なことに気づくことが出来た。

 新型インフルエンザの話題が盛んである。ウィルスは生物か否かの論議もおもしろい。電子顕微鏡でなければ見えないような微細なものが複雑な動きをしている。今回のロボットづくりをきっかけに自然界への畏怖の念がさらに増したように感じる。