XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

虹に向かって走る

今日は大変な天気であった。しかし、その天気がすばらしいものを見せてくれた。
18時30分頃、西から東に向かって高速道を走っていた。
空は黒雲に覆われ、断続的に激しい雨が降っている。たたきつけるような雨だ。雲の間から閃光が走り、少し遅れて雷鳴が聞こえてくる。真っ直ぐに地面に向けて走る稲妻。雲から雲へと放電しているのだろうか、空を横切るように走る光も見える。車の中なのであまり音は聞こえてこない。黒い雲の中に盛んに光る強烈な輝きに見とれていた。
しばらく走ると雷鳴は止み、西の空が明るくなる。ちょうど日没の時刻である。頭の上にはまだ黒い雲があるが、西の方や南の空は窓が開いたように明るくなり、ところによっては青空も見えている。そして、薄れていく雲が輝きだした。オレンジ色から強い光になり、金色に輝いている。すばらしい夕焼けである。黒い雲の間から光が入ってきているのでなおさらその輝きが増している。
東の空にすばらしいものが出現した。虹だ。それも二重の虹である。地面から地面に続く半円の虹。虹の内側と外側では空の色が違っている。内側がより明るいグレーなのだ。黒雲の中にぽっかりと穴が開いたようだ。虹の色も鮮やかだ。はっきりと赤・緑・青・紫が見える。高速道の先に、虹の端が下りている。虹に向かって走るドライブになった。強い雨のせいだろうか、虹のせいだろうか、車の速度が落ちている。どの車も60kmほどになり、ゆっくりと走っている。これほどはっきりした虹を見たのは何年ぶりだろうか。いや、何十年ぶりかも知れない。しばらく虹とともにドライブを楽しむ。
もう一つサプライズが起こった。黒い雲と地面との間に開いた南西の窓に、富士山のシルエットが浮かび上がったのだ。ほんの一瞬である。感嘆の声を上げる間にその姿は通り過ぎてしまったが、なだらかに稜線を伸ばした富士山の姿がまだ淡い青さを残した空を背景にくっきりと見えたのだ。
いつの間にか虹は見えなくなっていた。周囲の車もヘッドライトを点け始めている。西の空の夕焼けも輝きをなくして暗くなってしまった。またいつもの高速道路に戻っている。
ほんのわずかな時間であったが、自然の織りなす不思議な美しさに包まれた経験であった。できれば写真に撮りたかったが、運転中ではできるはずもない。たとえ何らかの方法で撮ったとしてもわが目で見たあの情景とは違っていただろう。記憶として心に残った景色の方がずっとずっとすばらしいものだと思う。
すばらしき自然の贈り物に感謝。