XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

昆虫の森

shig552007-02-21

夕方、西の空が赤紫のグラデーションでとてもきれいだった。宵の明星・金星が地平線近くに輝きもう少し上には三日月が光っている。水平線に対して真っ直ぐな直線を描くように二つの天体が位置している。だんだんに変わっていく空の色といい、光を増していく月と惑星の競演はしばし立ち止まって見とれてしまった。

矢島稔さんの話を聞いた。群馬県立昆虫の森の館長さんである。多摩自然動物園の昆虫館を作った方であり、上野動物園でも仕事をされていた方である。
話の要点は「実体験」の大事さである。情報が氾濫し、たくさんの知識を知ることが出来るようになった現在、足りないものは「実体験・実体」ではないのかと言う話である。
矢島さんは、日本のこれまでの動物園は鳥獣魚介という本草学の流れから、昆虫が忘れられてきたこと、標本の展示という見学者からするとパッシブなものであったと位置づけている。見たり、説明文を読んだり、飼育ゲージなどで隔てられた状態で動物たちを見ていた。より実際の姿に触れるためには動物園の姿を変えるべきではないかと考え、「昆虫の森」を作ったのだそうだ。
「昆虫の森」は里山をイメージし、日本の原風景の中にいるようなごく普通の昆虫を実際に採集して手で触れ、観察するようにしているという。そのためのバックヤードも公開し、解説ボランティアが入場者と一緒にフィールドに出て見学するという仕組みになっているとのこと。
群馬の自然と対比するため西表の自然をそっくりそのまま移したような温室があり、たくさんの蝶が飛びかっているようだ。
カブトムシやクワガタなど子どもたちに人気であるがどんなところに生息し、どのように成長してくるのかまで知っている子どもは少ない。カブトムシの幼虫が育つためには腐葉土が必要でその腐葉土は森の中で作られていること、また、幼虫をさわった感触やうごめく様子など実際に触れることから得られる情報はとても多い。写真を見て解説を読んだだけでは感覚としての情報は得られない。触れること、体験すること、アクティブに自分からその対象に直に接することから、疑問が生まれ探求心が芽生えてくる。知識ではない知恵が身に付くには教えられることではなく、自ら学ぶことが必要である。矢島さんの目指している施設のポリシーに共感することが多かった。
残念ながら、まだ「昆虫の森」に行ったことがない。話を聞く中で是非行ってみたいと言う思いに駆られた。
旭山動物園上野動物園、葛西水族園などさまざまな工夫で変わってきている。国立科学博物館でペンギンの翼に触れたとき、その堅さにびっくりしたことがあった。知のワンダーランドが楽しくなってきた。