XRQ技研業務日誌

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戦争というもの

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戦争というもの

半藤一利 株式会社PHP研究所

 戦争とは破壊であり、その損耗にどちらが耐えられるかの我慢比べだ。苦しみを生み出すだけで何の解決にもならない。起こしてはならないものだ。

 著者の半藤一利さんは平成3年1月に逝去されたという。終戦を少年として体験し、文芸春秋などの編集長をされ、昭和史研究の第一人者として歴史探偵とも呼ばれた方だという。高齢になって、転倒による骨折で入院され、ベッドの上で企画されたものの一部がこの本だそうだ。
 扉に「人間の眼は、歴史を学ぶことではじめて開くものである。」とある。本は平易な文で構成され、大東亜戦争の時系列でその時々の「名言」を中心にした14の話である。「名言」とはその時代の雰囲気や状況を凝縮したもののようである。
 山本五十六の「一に平和を守らんがためである」という言葉から始まる。ABCD包囲網で経済封鎖をされ、米との交渉も進展せず、開戦を目前とした会議において発せられた言葉だという。戦争に突き進んでいく過程においての状況が読み取れる。
 この本の最後の話は8月9日のソ連参戦の際の参謀次長河辺虎四郎中将の「予の判断外れたり」で終わっている。
 企画では37話が収めれれるようになっていたというが、未完になってしまったようだ。編集者であるお孫さんに託された「戦争がいかなるのもか」という筆者の思いが詰まった本になっている。
 政治や軍事など大上段に構えて論評するものではない。その当時の世論にを示すものとして、また、時世を表わすものとして名言を切り取り、一つ一つの言葉が発せられた状況を見ていくことで戦争というもののさまざまな側面を見る内容になっている。私はほんの数時間で読み終えたが、身近にある戦争という視点で多くのことを考えさせられた。

 宇宙、サイバー、電磁波、無人機、生物、AI、・・・など戦争の状況は代わっていくようだが、破壊によって大きな被害がもたらされることに変わりはない。多様性を認めつつ互いを尊重し戦争に依らず紛争を解決する術を探ることを大事にしなければならない。日本では戦後76年を過ぎる。私を含めて実体験を伴った戦争は知らない人がほとんどだ。しかし世界では戦火が絶えることはなかった。戦争とは何なのかということをさまざまな視点から知っておくことが必要なのだと思う。