XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

ペーパークリップ パドル

ものづくりを楽しむ

 ペーパークリップを使ったパドルのアイディアは10年以上も前に公開され、さまざまな製作例が出されている。
 このペーパークリップは板ばねを使った紙などを挟んでまとめるものだが、シンプルながらとても巧妙な仕組みが施されている。板ばねで紙などを挟み込むが、挟むときには板ばねを開かなければならない。そのためにレバーがついている。てこの原理で板ばねを開くのだ。しかし、このレバー、クリップとして使用するときには邪魔ものである。ぶらぶらしていては具合が悪い。そこで、紙などを挟んだ時、しっかりと紙などに密着するようになっている。その仕組みが、板ばねとレバーの接続部分である。レバーは粘りのある針金で出来ていて、左右に広がるテンションが掛かっている。それを受ける板ばね部分は斜めにカットされた筒状になっている。その筒の中にレバーの針金を入れると、斜めにカットされた部分を針金が押し広げることでレバーは紙などに密着するような力を受ける。
 
 パドルはこの作用を利用している。レバーを受ける筒状の部分を細工し、レバーを板ばねから離れるようにする。そしてレバーと板ばねとの間に接点を設け、パドルとして構成している。単純な機構だが、板ばねの筒状の部分をいかに成型するかでレバーの開き具合、テンションが決まるのでパドルのフィーリングが変わってくる。微妙な調整を繰り返す必要がある。またレバーの開き具合を制限する細工や、レバーを接点とする細工などさまざまな工夫が必要だ。使い勝手のよいパドルに仕上げるのは難しい。もの作りの醍醐味が味わえる。

 いくつものクリップパドルを作ってきたが、今回はシンプルなものを作ることにした。エマージェンシー用の小ささに拘ったものだ。板ばね部分が20mmほどのクリップを使う。この中に3.5mmΦのステレオジャックが丁度入ることをみつけた。オスーオスのプラグケーブルを使うことでパドル自体はとても小さくなる。写真のように親指の先程の大きさだ。ただし、小さいが故に操作性はあまりよくない。パドルは左右にレバーを操作するので、その力に抗うようにしっかり保持しなければならない。全体を握りこむように保持することで符号を打つことができる。日常使いにはこれまで多くの方が紹介されているように木片などに取り付けた方が使いやすいだろう。今回のパドルは非常時の代替として備えておくものという位置づけである。
 工作を楽しめ、出来上がれば手のひらに収まってしまうほどコンパクトで邪魔にならず携帯できるパドルである。休日のひと時、もの作りを楽しむのはいかがだろう。 

 追記 
 13mm幅のクリップでパドルを作ってみた。さすがに小さすぎて操作が難しい。そこで3mm厚のアクリル板を重ねてクリップに噛ませた。ちょうど良い掴みになり操作性が良くなった。少し図体は大きくなるが移動用の予備として使えそうである。

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OAM  (オン エア- ミーティング)

モールス符号で簡潔に情報交換

 

 A1クラブでは毎週土曜日の朝、お空の上でのミーティングを行っている。いろいろなやり方があるのだが、キー局が各局からの呼びかけを受けてチェックインをすることが多い。クラブのOAM部会でキー局担当者が選任され、その局からミーティングの概要がメーリングリストで公示される。そして当日、そのキー局が「CQ A1C OAM」の電波を出すと、全国のクラブ員がキー局に対して呼びかけをするのだ。
 キー局は毎回異なることが多いので、担当者によって北海道から沖縄まで各地から電波が出ることになる。その日の伝播コンディションにも左右されるので、チェックインできるかどうかも運次第なところがありスリリングで面白い。時には全く電波が届かず、キー局が出ているはずの周波数をワッチし続けても聞こえてこないこともある。

 先日のOAMは沖縄県那覇市の局がキー局であった。開催時刻になり事前に示されていた7MHzの周波数をワッチする。ノイズだけで信号は聞こえてこない。呼びかけているはずの全国の局の信号もほとんど聞こえない。運用状況についてはA1クラブサイトのチャットルームで見られることが多いので覗いてみる。運用は順調に進んでいるようで、そろそろ7MHzは終了して次の10MHzに移っていくようだ。10MHzでのワッチを続ける。しかし、聞こえてくる信号はまばらだ。キー局の信号らしきものはあるようだが内容は判読できない。14MHzに移る。ここではキー局の信号が確認できた。大きくなったり小さくなったりQSBという不安定な伝播状況である。九州の局がキー局を呼んでいるのが聞こえる。関東や東北の局がキー局と交信しているようだが、それはキー局の交信内容からわかるので、関東や東北の局の信号は入感していない。電離層は近くのエリアはスキップされ、遠距離に届く状況のようだ。不安定に聞こえてくるキー局の信号に対して、自分のコールサインを送ることを繰り返す。キー局を呼ぶ信号はほとんど聞こえてこないが、キー局がさまざまな地方の局と交信していることはわかる。キー局の信号は波のように浮き沈みしながら聞こえ方が変化している。信号が徐々に大きくなってきたところで、こちらの信号もキー局に強く届いてくれることを願って送信する。コールバックはなかなかない。キー局の動向を見ながらコールサインを送るこよを繰り返す。すると、「JA1?」という コールバックがあった。こちらのコールサインを2回繰り返す。「JA1X?」という返信が来た。更にコールサインを2度送る。やっとこちらのコールサインを取ってくれたようだ。粘った甲斐があってレポートを交換してチェックインができた。
 その後、18MHz、21MHz、24MHz、28MHzと周波数を変えてOAMが続けられたようだが私のところではキー局の信号を確認することができなかった。

 伝播状況は無常である。移り変わるコンディションの中、キー局を追いかけることで自局から見た伝播の状況が分かってくる。土曜日の朝、普段では感じられない宇宙の営み、電離層などの自然状況を覗いてみるのも一興である。

伸縮ホイップMLA

小さく収納、簡単設営

 ネットを彷徨っている時、伸縮ホイップアンテナを使ったデルタループアンテナというものを知った。1波長のループを作るとダイポールと比較しても放射効率の高い(ゲインのある)アンテナになるそうだ。この市販されているアンテナは給電点にコイル状の部分があり、6mから80mバンドまで使えるのだという。使用する周波数に見合った長さのエレメントではないのに、どのような仕組みなのか検索してみたが解らなかった。1波長ループを基本としているようだが、伸縮ホイップとその先端を結んだ逆三角形のループで波を乗せている。面白いアンテナである。

 この一波長ループのアンテナを真似ることは出来ないが、伸縮ホイップを使うというアイディアで、MLAを作ってみることにした。給電点とキャパシタ部を収納し、同時に伸縮ホイップの支持とするようケースを加工した。昔のテレビアンテナのような形状で、ループとは言っても円のように丸くはないが整合点を見出すことができた。MLAとして機能しそうである。

 このアンテナを持ち出して運用してみた。トランシーバーにつなぎポリバリコンを回すと急に雑音が大きくなるところが見つかる。そこが整合したところと目星をつけた。後日アナライザで確認すると、雑音の大きさで目星をつけたところがほぼ整合点であることを確認している。
 このアンテナの効率はあまり良くない。QRPであることもその理由ではあるが、呼びかけをしても相手にしてもらえないことが多い。強力な電波を出す局にどんどん追い抜かれていく。電波が出ていないわけではなく弱いのだ。相手が見つかるか否かは伝播コンディションに大きく影響されるのは致し方ない。
 このアンテナの利点は、設営が楽なことだ。ケースの底の部分に、ナットを取り付けている。ここに写真撮影などで使われる三脚を取り付けられるので、自立できるのだ。伸縮ホイップを伸ばし、両端がクリップになっているエレメントを取り付ける。これで設営完了。リグを接続し、受信ノイズが最大になるところにキャパシタを調整すれば運用を始められる。
 伸縮ホイップは長さが120cmの小さなアンテナだが、40m、30m、20mバンドで整合が得られている。伸縮ホイップなので縮めればより高い周波数でも整合が得られる。上側のワイヤーの3分の2の途中にクリップをとりつけ、ループを小さくして使用する。実際の運用でもQRP機に接続して近隣の海外や国内との交信が出来ている。簡単に作れるテレビアンテナもどきのコンパクトMLAをサブアンテナにするのは如何だろう。

QRP & MLA

QRPだからできるMLA実験

 QRP(小電力通信)とMLA(マイクロ ループ アンテナ)は本来距離の離れた存在である。なぜなら、QRPの場合、小さな電力なので効率的に電波を放出するよう効率のよいアンテナを使用する。また、MLAはとても小さなアンテナなのだが放射効率はあまりよくない。そのためエレメントに太い銅管を使うなど高出力を乗せるようなものである。 ところがこの2つを合わせることで思わぬメリットがある。小電力とコンパクトな形状なので、実験を楽しむには好都合なのだ。小電力なのでアンテナに使う部品は高耐電圧のものでなくとも使うことができる。普通の電子回路に使うような部品でもほぼ賄える。コンパクトな形状のため、部屋の中で組み上げることができ、動作実験も天井から吊すような仮設でもできる。試行錯誤の繰り返しの実験を部屋の中で行えるのは有り難い。

 もっともっと簡易なアンテナをということで実験をしてきた。出ている局数が多く相手局が見つかりやすい7MHzのものだ。波長が40mにもなる周波数であるが、2.1mのアルミワイヤーで形作ったループに電波を乗せるようにする。直径70cmほどの輪になっているところに同調させるためのキャパシタを取り付ける。この部分は高電圧がかかるので通常のMLAではエアーバリコンなどが使われることが多いが、QRP仕様なので基板用のコンデンサやトリマー、ポリバリコンでも賄える。キャパシタはどの程度の値が必要なのか実験で確かめる。アルミワイヤーを受ける部分はさまざまな工夫が考えられる。直接接続するのもいいが、アルミのハンダ付けは一手間必要である。コネクタを使うにはどんなコネクタにするか思案のしどころだ。給電は小ループにするかトロイドコアでのリンクコイルにするか。また、リンクコイルの巻き数でSWRの値が変わってくるので何ターン巻くか。全体を纏めるにはケースに入れるか、その他の工夫をするのか。MLAとして使えるようにするには考え工夫するところがたくさんある。その一つ一つを実験を通して決めていく。これこそアマチュアの楽しみである。
 実験を繰り返し出来上がったものをアナライザで測定すると7MHzの普段使う周波数でSWRのディップ点が見つかり、整合はとれているようだ。トリマを動かしながら最良点に調整する。周囲の影響を多少受けるようだが、部屋の中でも概ね調整することができた。実際に使ってみる。7エリアの移動局が聞こえたので呼びかける。応答があった。しっかり電波が飛んでくれているようだ。この時のリグは約2W出力であった。

 QRP & MLAは 運用場所のロケーションと伝播のコンディションに大きく依存した設備なので、多くの局と交信するのは難しい。それでも、たとえ1局であっても自作した設備から電波が届いたという喜びは大きい。偶然性を楽しむアマチュア無線である。一局入魂の交信ができるよう、実験を楽しむ、こうしたニッチな取り組みもありだろう。

LEDバー電圧計

忘れていた昔の作品

 またまた片付けネタである。納戸の中には昔作ったものが放り込まれている。少しずつ片付けているのだがなかなか進まない。その最中に、写真のようなものを見つけた。自分で作ったものなのだがよく覚えていない。LEDが6個ついていて電源用のコードが出ている。動作させてみればと電源に繋いだ。LEDが点灯。電圧を変えるとLEDの点灯する数が変わる。押しボタンを押すと、LEDがモールス符号で数字を表示する。

 いろいろ思い出しながら、10数年前のこのブログの記事を見つけた。LEDバーで表示する電圧計であった。記憶は消えてしまうものだ。こうして物が出てきたことでその時のことが思い出せる。懐かしい気持ちで電圧計を動作させて悦に入る。テスターと比較してもほぼ正確な電圧で動作している。ケースの中を見ると12F683 という小指のツメ位の小さなPICが使われている。8ピンのマイコンだが、それで6個のLEDを駆動している。だんだん思い出してきた。少ないピンのマイコンで出来るだけたくさんのLEDを駆動しようと試行錯誤を楽しんでいた時の作品だった。製作記事
 最近ではPICを使った工作はほとんどしていない。Arduinoという使い勝手の良いものが手に入ったので専らArduinoを使うようになってしまった。これは結構大きなプログラムでも収めることができる上に、さまざまなライブラリーが利用できるので複雑な動作を簡単にできるので便利なのだ。この電圧計のような動作ならほんのわずかなプログラムを書くことで同じ動作を実現できる。さらにもっと複雑な動作をさせることも出来ろだろう。否、この程度の動作ならメインプログラムの一部として収めてしまうような機能である。

 10数年前はまだRapsberryPiが出始めたころだろうか。自分でプログラムを書くにはさまざまな手筈が必要だった。部品を寄せ集めて回路を考え機能させていたことから、プログラムによって機能させることに流れが変わってきた時代である。小さなマイコン(マイクロコントローラー)を使うと簡単な回路でさまざまな動作をさせることができることに嬉々としていた。この作品は2つのLEDを逆方向に並列接続し、電流の向きをPICで制御することで個々に点灯させることを楽しんでいたのだ。高速で点滅させることで眼の残像によってあたかも常に点灯しているように見えることを利用している。PICの8本のピンのうち電源とGND、入力専用のピン以外の残りの5本のピンをLED制御に使い、8つのLEDを任意に点灯させていた。
 
 技術の進歩はどんどん進んでいる。新しいものに置き換えられていくのだが、こうして昔自分で作ったものに再会すると「まだまだ使えるじゃないか」という心の声も聞こえてくる。・・・・・・ これだから納戸の片付けが進まないのだ。 

デルタループアンテナ?

無手勝流でループアンテナを実験した

 λ(ラムダ)ループアンテナ(一波長ループアンテナ)というアンテナがある。一波長の線を輪の形に伸展し、その始点と終点から給電するアンテナである。折り返しダイポール(フォールテッドダイポール)を広げて輪の形にした様なアンテナだ。このアンテナはダイポールアンテナよりも利得が高いと言われている。給電点のインピーダンスは100~110Ωのようである。
 エレメントの長さは1波長より一割ほど長めで同調が得られるようだ。一波長と言うと3.5MHzでは80m、7MHzでは40m程になり、輪にするとそれぞれ直径が27m、13m程になるので巨大なアンテナになってしまう。実際には縦に設営するだけではなく横に寝かせて設営する場合もあるようだが、大きなアンテナではある。
 輪の形にするのが放射効率が高いと言われているが、設営の利便性から三角形に設営するものもある。その形がΔ(デルタ)に似ていることからデルタループアンテナと言われている。
 さて、効率の良いアンテナが欲しいのはやまやまだが、設営できなくては始まらない。ランダムレングスアンテナがあるように、その周波数に同調していなくても、入力インピーダンスを出来るだけ合わせることで、取り敢えず電波の出るアンテナができないかと考えた。すなわち、一波長になっていないがそこそのの長さのワイヤーで輪を作り、給電点にインピーダンス整合のためのチューナーをつけたループアンテナである。
 今回は移動運用などで使うアンテナを念頭にしている。ループ部分を三角形に形作るために、以前MLAで使用した三角帆型を使うことにした。グラスファイバーのポールに沿わせたラインと、ラインの途中をパラコードで横に広げることで三角形を形作る。給電点はポールの根元になるようにし、ここにチューナーを配置し整合を取る。

 実際に製作してみた。ワイヤーの長さはまず8mほどで試した。EFHWで使ったチューナーで整合を取り、どうにか使える程度のSWRに調整できたのは10MHzから24MHzであった。7MHzではどうしてもSWRが下がらない。そこでよい長い17m程のワイヤーで試した。7MHzや10MHzで十分に使用できるSWRに下げることができたが高い周波数ではSWRが高かった。チューナーを替えたらと思い付き、ロングワイヤー用のものを試してみた。するとどちらの長さのエレメントでも7MHz~28MHzまでSWRの下がるところを見い出せた。このアンテナではBLTのようなチューナーが適しているようである。

 7MHzで使ってみた。受信は良好である。送信もMLA等コンパクトなANTに比べてよく飛んでいるように感じる。さすがに大きなアンテナほど利得が大きいようだ。このアンテナはGNDから浮いた状態で動作している。そのためか、アナライザーやリグの筐体に触れると動作が不安定になるようだ。リグの筐体をGNDに落としておくと動作が安定する。

 エレメントの長さがランダムで、使う周波数に同調してはいないのだが、給電部のインピーダンス整合をすることでアンテナとしては機能しているようである。本来の一波長ループアンテナとはなっていないのだが、スケールメリットを生かしたアンテナであると言えるだろう。このランダム長のデルタアンテナもどきは、ダイポールのように横に長く伸展する場所がとれない場合、同じくらいのワイヤー長を三角形に伸展することで設置できるので地面の専有面積を狭くできる。状況によって使い分ける選択肢にはなるのではないだろうか。
 

赤城のブルーベリー園へ

赤城山麓 萩原ブルーベリー園

 梅雨明けが宣言されたが、猛暑が続いたり台風が来たり不順である。天候だけではない。Covid19の感染者数がまた増加し始めている。さまざまな規制が解除され、元の生活に戻れそうな気配を感じていたのだが怪しくなってきた。
 ともあれ、感染防止対策をしながら日常を取り戻したいものだ。ここ数年出かけることを避けてきたのだが、思い切ってブルーベリー狩りに出かけた。赤城山麓にある果樹園で、土日には近くにある農産物販売所も開設されるため多くの人で賑わう。ウィークデーなら混み合うこともないだろうと出かけたのだ。高速道を利用して1時間半ほど。インターを降りるとすぐというアクセスの良さだ。周りは林や蒟蒻畑に囲まれ、周り中からさまざまな鳥たちの鳴き声が聞こえてくる静かな果樹園である。有機栽培をされているようでブルーベリーの株の周りは背の低い草が生い茂り自然豊かな風情である。
 果樹園に着いたのだが、誰もいない。仕方なくオーナーに電話を入れ、摘み取りの許可を得る。下草の露で足下は濡れるが、爽やかな風で気にならない。まだ口開けなのだろうか、大きな実がたわわに生っている。株の間を歩きながら熟した実をつまみ、口に入れる。酸っぱさと甘さが口いっぱいに広がる。株によって多少甘さが異なるようだ。甘い実を見つけた株から摘み取っていく。色の濃い完熟したのものを選びながら一粒一粒掌に納める。そして、時々口の中に放り込む。摘み取っているうちに果樹園のオーナーの軽トラが到着。「お久しぶりです」と挨拶をし、それぞれ作業を継続する。薄雲があり、日差しが柔らかで爽やかな風である。夢中になって摘んでいたのだが篭からこぼれ落ちるほどに摘み取れたので終了とした。
 オーナーに声をかけ計量してもらう。1kg毎にパック詰めされていく。同乗者の分と合わせて、4つと半分ほどの収穫だった。これで我が家の1年分を賄うのだ。しばらくは生食で味わい、残りは冷凍にする。小分けに冷凍にしておいて何回もジャムにして楽しむのだ。自家製ヨーグルトにブルーベリージャムは我が家の定番になっている。
 精算を終えオーナーと話をしていると、新しい品種があるという。ピンクレモネードという可愛らしい名前である。紫色の実ではなく熟してもピンクがかった赤い色なのだという。まだ株の数が少なく出荷していないとのことだが味見させてもらった。酸味をほとんど感じない甘さである。ブルーベリーとしては私的には物足りなさを感じる味だった。
 ブルーベリーの収穫は人の手で一粒一粒行うので市販されるときにはその分価格が高くなる。摘み取りをさせてもらうととても安価で自分好みの実を選んで収穫ができる。もっとも高速道路代の方が高額になってしまうのだが爽やかな風と小鳥たちのさえずりの中で甘酸っぱいフレッシュベリーを味わう醍醐味は価格以上のものがある。コロナ下、人と交わることもほとんどない久方ぶりのリフレッシュであった。