XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

Trap EFHW その2

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トラップの調整をしたEFHW

 

 2020年の2月にも同じタイトルで書いたのだが、実験を進めるとこのアンテナについてわかってきたことがある。
 エレメントの途中にLとCで構成した同調回路を設けると、設定した周波数で最大のリアクタンスになることから、その周波数に於いてトラップを置いたところでエレメントが終わっているように動作する。これを利用して1本のエレメントの中にいくつかのトラップを設定して、複数の周波数帯で半波長アンテナとして動作させる。
 これまで計算でCとLの値を求め、それに従ってコイルを巻いてトラップを作っていた。一番高い周波数帯の半波長の位置にその周波数に同調するLC回路を入れ、次の周波数に対応するエレメント長はアナライザーで測定しながら求めていた。トラップのLがローディングコイルとして動作するため、計算上の半波長より短くなるためである。
 こうして作り上げたマルチバンドのアンテナだが、実際に使ってみるとトランスフォーマーだけでは整合がとれないことが多かった。そのため、チューナーを使って各バンド毎に整合をとって使っていた。
 
 最近コネクタと一体化したトランスフォーマーの実験をしていて、ことのほか機能してくれるのでいくつものTrapEFHWを作った。その中でトラップの製作に於いて、所定の周波数に同調するよう調整を行った。計算で求めた巻き数やキャパシタンスで作っても同調周波数は結構変動していた。巻き数を変えたり巻き方の粗密を調整して所定の周波数に合わせる調整である。
 こうして作ったトラップではトランスフォーマーだけで複数のバンドで整合がとれたのである。エレメントの給電部から見て、どの周波数でも半波長になるよう調整できたからだと考えられる。以前はこの調整を行わず、計算だけで作っていたので、整合がとれるようにエレメント長を調整してもそれは半波長にはなっていなかったようだ。そのため、実際に使う時、周波数毎に給電部のインピーダンスが異なりチューナーが必要だったのだろう。
 
 小さな気づきではあるが、実験を通して視野が広がったように思う。教科書のどこかに書かれていたことかもしれないが、実体験を通して気づいたことは大きな収穫である。もの作りを通してのこうした学びは楽しい。
 3つのトラップを入れて、40mから17mまでの4つのバンドで切り替えなどの操作をせず、リグの周波数を動かすだけで運用できるアンテナができあがった。なかなか便利である。

プリフィックス

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1エリアで交信した局へのQSLカード

 QSLカード(交信証)の並べ替えをした。QSLカードを各局に転送してくれるビューローに送るとき、予め分類しやすいようにプリフィックスを並べ替えるのだ。まとめていくと1エリアの局が多いことがわかる。その中で、ある偏りがあることに気づいた。JA,JH,JRの局が多いのだ。
 無線局にはその電波の出所が明らかになるように通信にコールサインを付加することが定められている。国境を越えて飛んでいく電波なので、国際的な取り決めによって日本ではJAA-JSZ、7JA-7NZ、8JA-8NZという符号がプリフィックスとして割り当てられている。これによりアマチュア局もJA1〇△◇などというコールサインが指定されている。JAのようなアルファベット部分はこの国際的な取り決めに従うが、次の数字部分は管轄する電波管理局を示すものである。その後のアルファベットや数字は各局を識別する符号でサフィックスと言われる。
 かつて、科学技術に大きな関心が寄せられた時期、日本のアマチュア無線従事者免許でモールスコードの試験がない電話級が新設された。これによりアマチュア無線を始める人が爆発的に増え、130万局を超えた世界一のハム人口になったことがあった。そのため発給されるコールサインが枯渇し、1エリアでは7K,7L,7Mは本来管轄通信局を表す数字のうち1~4までを関東総合通信局管内で使う対応がなされた。それでも割り当てができなくなり、現在では一度使われたコールサインの再指定が行われるようになっている。

 プリフィックスの発給順序だが、JAから始まっている、その次にJHが、さらにJRと言う順で発給され、その後はアルファベット順で、7J、7K・・・と続いた。JAというコールサインは戦後再開されたアマチュア無線で発給された最初のコールサインであり、すでに50年以上前から無線をしていた人たちと言うことになる。コールサインの再指定が行われているので一概には言えないのだが、昔から活躍しているJH、JRの人たちが今でも活発に活動されていることが窺える。
 ハム人口が爆発的に増加する前には数年をかけて一つのプリフィックスが発給されていた。アマチュア業務という無線に関わる私的追求をすることに強い関心を持たれた方々だったのだろう。今でも無線の奥深い世界に強く惹かれている様子がこれらのプリフィックスのカードが多いということに表れている。
 
 私はCW(電信)での交信しかしていないので、相手をしてくださった局も多少偏りがあるかもしれないが、交わす交信の内容でも若い方よりある程度の年齢の方が多いように感じる。無線という世界で私的な探求ということのおもしろさは年齢に関係ないはずである。コンテンツだけでなくハードやスキルなどの部分を含めたアマチュア無線の楽しさ、おもしろさをもっと若い人たちに知ってほしいと願う。

熱収縮チューブ

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インピーダンス変換トランス、ベースローディングをコネクタと一体化

 これまではビニールテープを使っていた。配線のむき出しになった個所が接触して短絡を起こさないようにテープを巻いていた。しかし、最近はその役割が熱収縮チューブに代わっている。事前にワイヤーにチューブを差し込んでおき、ハンダ付けした後、チューブを移動させて被せてしまえばよい。ヒートガンを使って収縮させるのだが、通常は半田ごてを触れさせることで間に合わせている。剥がれることもなくしっかりと保護してくれるので便利である。
 熱収縮チューブは、熱を加えることであらかじめ記憶させた形状に戻ることを利用したプラスティック系の素材で作られたものである、これを配線の被覆以外にも活用できることに気づいた。
 大きめのものも市販されているので、ある程度の大きさのものならこのチューブで覆ってしまうことができる。つまり、カバーとして、ケースとしての役割をさせることができるのだ。素材が収縮するので、中身の形状がどのようなものでも、その形状に合わせて覆ってくれる。

 このことに気づいて製作したのがEFHWのインピーダンス変換トランスフォーマーバーチカルアンテナのベースローディングコイルである。
 EFHW(終端給電半波長アンテナ)はトランシーバーとの接続部にインピーダンスを合わせるための機構が必要である。その回路を別のケースに入れて作っていたのだが、コネクタ直結で作ってしまい、熱収縮チューブで覆って一体化させることにした。内部の配線はチューブを被せて短絡を防止するようにしておく。全体が組み終えたらチューブを被せ熱風を当てる。チューブが収縮することでコイルなどの部品の位置を固定してくれので、ケースの役割にもなる。
 バーティカルアンテナではベースローディングコイルをコネクタと一体化した。私の場合、小電力(QRP)での運用なので細い線でも対応できる。コアに必要な巻き線をして配線をする。コアはコネクタのセンターピンに被せるように配置し、全体を熱収縮チューブで覆う。エレメントに接続する部分はコイルの細い線へ力が加わらないようにしなければならない。幾重にもチューブを被せて、エレメントからの力がコネクタへ伝わるようにする。配線を覆うだけでなく、そこにかかる力をチューブで受けて、配線を保護するようにした。
 
 熱を加えるという簡単な操作で扱うことのできるこの熱収縮チューブは、まだまだいろいろな場面で使えそうである。色も豊富であり、大きなものも入手しやすくなっている。モノづくりの大きな味方になってくれそうである。

リメイク

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昔作ったものが捨てられない

 部屋の片づけをしている時、もう20年以上前に作ったエレキーが出てきた。詳細については忘れてしまった。PICにプログラムしたもので、5つのボタンが付いているので、プログラムの中にメッセージを予め書き込んであり、このボタンで送り出すものだと思う。スピードコントロールがついていないので、スピードは変えられないようだ。記録もないし、電池は消耗していて動作もしない。懐かしさだけなのだが、捨ててしまうのは忍びなく思った。
 ケースだけではあるが、昔の形を活かして作り直すことにした。中身はArduinoのK3NGキーヤーを使うことにする。ボタンが5つあるのでメモリーを4つ使える仕様にし、一つはコマンドボタンとする。パドル部分には押しボタンが使われていたが、間隔が広くストロークが堅いのでタッチパドルに変更する。タッチするパッドの間隔を狭くするため、上面とサイドにパッドを取り付け、90度の角度で親指と人差し指が触れる位置にした。電源は14500のリチウム電池で、充電できるようにチャージモジュールを取り付け、DC-DCコンバータで5Vを得るようにする。Arduinoはこれまでも使ってきたシンプル基板でUNOとして動作させる。
 約半日掛かって組み立てた。一つの基板ではなくそれぞれの機能をモジュール化し、それを熱収縮チューブで覆うようにした。それぞれのモジュールを配線し、後はケースの中に力づくで押し込む。
 送信機へ接続する3.5mmφのプラグは金属製のものが使われていた。長年放置されて光沢を失い、くすんでいた。コンパウンドを使って磨き上げる。元の輝きがよみがえった。今では樹脂製のプラグがほとんどだが、昔は金属製のものが使われていたのを思い出す。
 スイッチを入れると、”Hi ”と応答があり動作を始めた。コマンドモードに入ればさまざまな機能が使える。外見は昔の面影を残しているが、機能は豊富になった。
 
 小学校の5年生の時、初めて水道パイプにコイルを巻いた鉱石ラジオを作ってクリスタルイヤフォーンから音が出ることに驚嘆してから、アマチュアとして電子工作や無線を楽しんできた。その過程でのエレキーだった。一枚の基板上に組み上げるのが定石だったが、最近ではモジュール化の便利さを実感する。個々の機能を持ったものを組み合わせることで一つの機器として作り上げることができる。自作しなくてもチャージモジュールやDC-DCコンバータモジュールなどはとても安価で入手できる。高機能なスケッチが提供されていて、Arduinoとしてすぐに動作させることができる。技術の進歩の恩恵である。

 ノスタルジーに浸りながらも、断捨離ができていないことに気づく。なかなか思い出のあるものが手放せない。少しずつ、思いを断ち切ってものを減らし、やっと部屋の床が見えてきては居るのだが・・・・ 

これだからやめられない

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QSLカードが届いた

 JARL(日本アマチュア無線連盟)からQSLカード(交信証)が届いた。その中に、すごいカードが含まれていた。

 電波は直接届く場合もあるが、短波の場合、電離層などに反射して届くことが多い。どのような伝播経路をたどるのかは定かではないが、太陽からの影響など自然の営みの中で常に変化する状況で伝播している。携帯電話に使われている極超短波では直進性が強いので直接届くのがほとんどで、自然の影響を受けることは少ないが、短波では電離層などの状況がそのまま電波の伝わり方に影響する。

 届いたカードには同じ日に6つの周波数で交信したことが記されていたのだ。このようなことはめったに起こることではない。特別なカードである。
 この日はコンディションがことのほか良く、高い周波数でも全国に伝播していたようだ。
観音寺市に移動して運用していた局と、7MHz、14MHz、18Mhz、21Mhz、24MHz、28MHzでの交信をすることができたことがその交信証に記されていた。さすがに1枚のカードでは記載できず2枚のカードになっている。相手局は公園での移動運用で50Wの出力、アンテナはロングワイヤなどが使われたとのこと。私の設備は7,14MHzでは3W、18MHzは2W、21,24,28MHzは2.5Wという小電力で、アンテナはワイヤーを地上高5mほどの高さに伸ばしたものであった。
 たまたま、伝播の条件が整ったおかげで交信できたのだが、こうした偶然を楽しむことができるのがアマチュア無線である。技術的興味から、いかに効率よく電波を受け、送ることができるかを工夫していくのだが、そこに自然条件という要素が加わることで面白さが増してくる。偶然ともいえる諸条件の動きの中で電波が思いもよらない伝わり方をし、人と人を結び付けてくれる楽しみである。
 7MHzで7:52に交信をし、だんだんに周波数を上げていき、9:47に28MHzでの交信をしている。相手局と打ち合わせをしたわけではなく、その局が周波数を変更するごとに呼びかけて交信できた結果である。移動運用でたくさんの方との交信を楽しんでいらした中に割り込ませていただいたのだが、2時間余りの間で6つの周波数帯で繋がることができたのはラッキーと言うしかない。

 こんな偶然に出合うとますます無線が面白くなる。これだからアマチュア無線はやめられない。

 

部品チェッカー

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components Tester

 製作をしていると部品の素性を調べたい場面に頻繁に出会う。ダイオードの極性であったり、トランジスタやFETのピン接であったり、また、抵抗やキャパシタの値であったり。データーシートや部品に書かれている数値を見ればよいのだが、いちいち資料を探すのは面倒だし、老眼になってきて細かな数字やカラーバーが見にくくなっている。簡単にこれらをチェックをするツールがあると便利である。実は私もPEAKのDCAや中華製のモジュールのものを活用しているのだが、今回、それと同じような機能のものがArduinoで作れるというのを見つけた。
 YouTubeでみつけた製作を紹介する映像である。ハンダ付けや穴あけなどの同じようなシーンが長々と続くものだったが、できあがったものには興味を惹かれた。
 Easy Techさんの映像で、コメント欄にはホームページを開設していることが記されていた。それによると、元々は ”AVR Transistortester ”として Karl-Heinz Kubbelerさんが開発したAVRベースのものをArduinoに移植したもののようである。

 Easy Tech さんのサイトには製作に必要な部品や回路、スケッチが掲示されている。製作させてもらおうと思い、そのスケッチをコピペしてIDEに載せてみた。しかし、引っかかってしまいコンパイルできなかった。ライブラリーが影響しているのかなど悩んだのだが、ふと、Easy Techさんのサイトを見直していた時、スケッチが表示される窓の下にダウンロードできるURLが書かれていることに気づいた。そこからスケッチをダウンロードしてそのスケッチをIDEに載せてみると、うまくコンパイルすることができた。画面からのコピペでは文字化けが出ていたようだ。
 Easy Techさんのオリジナルのものでは、電源関係に18650のリチウム電池が使われ、それに充電するためのモジュールや、9Vに昇圧するためのモジュールが使われ複雑になっている。ここは006Pの積層電池に代えて、回路を簡略化することにした。製作記事
 組あがって電源を入れてみるがLCDの表示が出ない。I2Cでの接続なので、そのアドレスが影響しているのだろうと推理し、確認する。オリジナルのスケッチは0x27と書かれていた。I2CアダプタのアドレスをArduinoのアドレス確認スケッチを使って調べてみると、案の定 0x3F であった。アドレスが違っていたのだ。スケッチを書き直してあらためてコンパイル、書き込みをすると表示が出て動作を始めた。動作には多少時間が掛かるが様々なデバイスの情報がLCDに表示される。なかなかの機能である。

 Arduino nanoとわずかな部品でこのような機能が実現できることは驚きである。この素晴らしいプログラムを公開してくれた方々に感謝。 

ボトルキャップでタッチパドル

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ペットボトルのキャップにタッチパドルを入れました。

 

 ペットボトルのキャップはさまざまな色があり、ただ捨ててしまうのはもったいなく思える。だんだん溜まっていきリサイクルに回すのだが、いつも何か利用できないかと考えている。
 ネットでは「一部を切り取ってカード立てにする」とか「並べて熱をかけコースターを作る」「マグネットピンにする」「切り抜いてカラフルなボタンにする」などいろいろ工夫している取り組みが散見された。「植木鉢にしてミニミニ多肉植物の寄せ植えを作る」という信じられないようなことをしている人もいた。

 これまでもこのボトルキャップを活用して、コイルを収納した9:1トランスフォーマーやSWRインジケーターなどを作ったが、今回はタッチパドルを作ってみた。キャップを眺めていて、2つのキャップを直接綴じ合わせることもできるのではないかと考えたのだ。キャップの中に回路を入れ、その両側をタッチパッドとする仕組みである。回路的にはこれまでいくつも作ってきたものと同じ、CMOSのロジックICを使ったものである。指を通して流れるごく微弱な電流を利用してキーヤーを駆動する。冬など皮膚が乾燥してくると電流が流れづらくなり、多少信頼性に欠けるところがあるのだがコンパクトに作ることができる。そして機械的な部分がないので壊れにくく、どんなところに押し込んで持ち運んでも大丈夫という特徴がある。
 キャップを2つ合わせると幅が28mm程になる。親指と人差し指で操作するのに不都合はない。ただ、他方の手でこれ自体を支えなくてはならないので、両手が塞がれてしまう。机上での落ち着いた運用やコンテストでの多忙な運用ではなく、野外での移動運用でなら十分使えるだろう。メインパドルではなく、サブパドルと位置付けて装備の片隅に入れておくのもよいと思う。

 さて、出来上がってみると、なかなか可愛い。キャップは色を遊べるのがいい。気に入った色の組み合わせで作るのが面白い。キーヤーに接続して運用すると小気味よく符号を送り出してくれる。加齢とともに失われていく肌の保水性はまだ失われていないようだ。 当初心配していたキャップ同士の接合だが、ホットグルーを両方のキャップの内側の周りに塗布し、2つを合わせると接着できた。案ずるより産むが易しである。ホットグルーなので取り外しも容易であり、気分で色の組み合わせを変えるのも面白い。ほんのわずかなリユース、リサイクルだが日常を楽しんでいる。