XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

木工工作のパドル

Touch Paddle

 モールス符号を送出する時、電鍵というキーが使われる。手首の操作で長点と短点を送り出すのだが、非常に高度な技能が必要とされる。名人という人たちはどれほど早く打電しても長点と短点の比率が揃っていて、信号を聞いていても惚れ惚れするほどきれいな符号を送り出す。
 最近では、この動作を電子的に行わせるエレクトロ・キーヤーが主流になっている。長点と短点の送出をパドルというスイッチで指示してやれば、装置の中で短点と長点、またその間隔、さらには符号の間隔までも自動的に整形されたモールス符号が送り出される。メモリーが入っているので、多少パドルの操作にムラがあっても、生成される符号をきれいにしてくれるのだ。
 さてそのパドル、単純なスイッチなのだが、タイミングよく操作するためにいろいろ工夫がされている。通常利き手の親指と人差し指で挟むようにして短点と長点の送出を操作する。人差し指でスイッチを押すと長点が送出され、親指でスイッチを押すと短点が送出する様になっている。この操作のフィーリングは人により好みがさまざまであり、接点の間隔やバネの堅さ、打鍵した時の反発の仕方など奥深いものがある。
 機械式のスイッチの代わりに電気的なスイッチを使うこともある。今回製作したのは皮膚の表面を流れる微弱な電流を活用した、タッチパドルである。環境などにより皮膚が乾いていると電流が流れず動作が不安定になるという欠点もあるが、手軽に作ることができる。
 回路などの詳細は私のホームページを見ていただきたい。このパドルの特徴は機構部分が全くないことである。そのまま荷物の中に放り込んでも壊れることがない。電源もキーヤーからもらうので電池の交換も不要である。左手でこのパドルを支え操作する時、左手の指が電極に触れるようにしてある。右手で長点と短点を送出するためのパッドに触れると、皮膚の表面を微弱な電流が流れてスイッチが入り、長点や短点を送出する動作をする。
 今回は木工細工を楽しんだ。木材を使うことにより、容易に切ったり穴を開けたり、磨いたり、釘を打ったりすることができた。オリーブオイルを塗ることで落ち着いた色合いにすることもできた。掌にしっくりと収まり、操作しやすい形態になるにはまだ時間が掛かりそうだが、ものづくりの一つとして楽しめそうな素材である。

体感

アーチェリーの競技

 耳で聞いたり、本で読んだりしただけではわからないことがある。実際に触れることで初めてそのことの理解に近づくという意味である。
 大江戸線光が丘駅の通路、商業施設から駅に向かう階段を下りたところに、車いすに乗ったアーチェリーの選手が弓を構えている大きな写真が掲示されていた。オリンピックが終わり、惜しくも女子団体がメダルを逃し8位入賞した。その時の緊迫した試合が記憶に残っている。それを思いだし、パラリンピックへの応援ポスターかと思った。ところが、通路を進んでいくと的が目に入ってきた。射手の写真があったところからでは気づかなかったのだが、122cmの的が壁に貼られていたのだ。
 アーチェリーは的まで70mの距離で行われ、矢は直線ではなく弧を描くように飛ぶと言うことは知っていた。実際ここの掲示が70mを正確に示しているのかどうかは不明だが、それに近い距離があるように思う。この距離を矢が飛んできて、的の中の10cmの円の中に当たるということが実感としてわかった瞬間である。
 地下の通路に入ってきた時、的の存在に気づかなかった。それほど的は小さく見え、遠い位置である。パラリンピックでは障碍の状況により50mでの競技もあるというが、それでも体感的にはすごい距離である。選手は精神を集中し、風などの影響を考慮し、矢の飛ぶイメージを考えながら的を射る。その技量のすごさをこの通路を歩きながら実感した。

 閑話をもう一つ
 光が丘にはもう一つ実感に近い体験ができるものがある。夏の雲公園から光が丘公園への通路の途中、月見橋の手前に太陽系のオブジェがある。
 太陽を表す円の周りに、同心円状にタイルは設置され、太陽系の惑星の軌道が表されている。太陽に近いところから水星、金星、地球、火星・・・と並んでいるのだがそれぞれの惑星の大きさに比例した球体の一部が顔を出している。太陽からの距離、そして惑星の大きさを図鑑ではわからない存在感として感じることができるオブジェである。木星の大きさに驚き、海王星の軌道の大きさに驚く。
 
 知っていることとわかることの違いを感じた出来事であった。

ハムフェア2016

MFJ9200に組み込んだ14500

 本当に何十年ぶりだろう、ハムフェアに参加した。その昔、晴海で開催されていたころは夏休みになるとワクワクその日を楽しみにして出かけていたのだが、仕事が忙しくなるとだんだんに足が遠のいていた。
 今回、ちょっとしたきっかけがあって、3日間参加した。前日の搬入からの参加である。あるコーナーを手伝うことになったのだが、自宅から会場まで1時間超の移動時間も余り苦にならない楽しいイベントだった。
 ハムフェアの楽しさは、様々な人たちと出会えることである。全国から、また世界からハムを愛する人たちが集まる。ハムの楽しみ方は人それぞれなので話題も豊富である。全くの初見同士が趣味を通じて話が盛り上がる。また、見たことのないものとの出合いも楽しみである。おもしろいアイディアがごろごろしている。クラブやさまざまなグループが活動の一端を紹介しているので思いもよらないものを見つけることもある。

 今回は出展者側での参加と言うことでブースに詰めていることが多かったのだが、それでも食事に行った折とか休憩の時、会場内を散策した。そこで見つけたのがこのリチウム電池である。MFJ9200に内蔵する電池として18650を3本束ねたものが提供されている。しかし、なかなか高価である。そこで自分で電池ケースに18650を入れて使おうとしたことがあるのだが、ほんの1mmほどはみ出てしまったのだ。そこで、ケースに収まるような電池を探していたのだが、この14500のリチウム電池を見つけた。容量は800mAhほどであまり長時間の運用は無理だが、単3乾電池と同じ大きさで、余裕を持ってケース内に納めることができる。
 ハムフェア終了後、早々にケースに組み込んだ。これで外付けの電池を用意しなくても運用ができる。こんな小さな電池で12V程度取り出すことができ、充電式であるのはありがたい。MFJ9200は電源ジャックのところで外部電源と内蔵電池の切り替えをしているため、電池を内蔵したままの充電はできない。しかし、バンド毎のモジュールを交換するためにケースを開けやすくしてあるので、電池を取り出して充電することも容易である。

 2日間のハムフェアでたくさんの方とお話をすることができた。「モールス符号ユネスコの無形文化資産へ」という願いを込めて、本の中ではなく「実際に使っているものとしてモールス符号を残していきたい」という思いを伝えることができたように思う。暫くぶりのハムフェア参加、楽しいひとときであった。

足湯

足湯でのんびり

 足湯が様々な観光地に設置されるようになってきた。以前、宮城の遠刈田温泉に立ち寄った時、共同浴場の前にそれがあり、温泉に入らず、気軽にくつろげるところとしてたくさんの人々が利用していた。裾を巻き上げ、足先を湯に浸すだけでじんわりと体が温まってくる。足の疲れも薄らいでくるように感じる。多くの人々が車座になっておしゃべりをする。なかなか風情のある施設だった。
 先日訪れた舘山寺温泉にもそれがあった。浜名湖の遊覧船発着所の近く、堀江城址水神を源泉とする足湯である。舘山寺を一巡りし、町の中を巡っている時に見つけた。浜名湖畔にあり湖のゆったりとした景色を眺めながら疲れをいやす。温泉に浸かるのとはまた別の心地よさである。
 さて今回はおもしろいところにある足湯だ。道の駅にあった。赤城高原でブルーベリー狩りを楽しみ、近くの農産物販売所を探したら、昭和IC近くにあるという。「あぐりーむ昭和」という道の駅である。「旬菜館」という農産物販売所と食堂が併設されている。さらに近くの工場敷地から出たという温泉が引かれていて、足湯を楽しむことができる。源泉かけ流しとかで、湯ノ花が舞う無色透明、無臭の柔らかな、ちょっと熱めの温泉である。立派な施設の中にいくつもの丸い湯船が設えられている。4〜5人で囲める広さである。床に敷くマットを借り、足を浸す。木の床のぬくもりと窓から吹き込む爽やかな風に時の経つのも忘れる心地よさである。屋外ではないので通年で使える施設のようである。しっかり管理が行き届いていて清潔で気持ちよく使わせていただいた。これが無料なのはありがたい。
 旅先でほんのりとした温かさに触れるのは記憶に残るものである。この足湯の記憶もその一つになっている。

お盆

ろうそくLED

 お盆というと多くの地域では8月に行うところが多いようだ。私の地域では7月に行っている。盂蘭盆会という仏教用語で言われることが多いが、祖霊を迎えるという習俗と仏教が結びついたという説もある。近隣の国でも同様な行事が行われているので、祖先に対する同じ思いで古来から行われてきた行事のようである。
 祖霊を迎えるために迎え火をたくところもあるが、私のところではお墓まで迎えに行く。そして家にはいる時には、「長旅、お疲れ様でした」という意味も含めて、ひしゃくから水を流して足や手を洗う仕草をする。そして普段の仏壇とは異なった、盆棚に入ってくつろいでもらう。祖霊が家に居る間は朝昼晩のお膳が供され、親戚の人々があいさつに来る。そしてお盆が終わる日、送り火を灯して祖霊をお墓まで送るのである。
 祖霊を大切にする行事で、いつまでも残したいものである。しかし、時代とともにやり方は変化してきている。送り迎えに使われる提灯の中には蝋燭が灯されていたのだが、最近ではほとんどLEDである。風に翻弄されて蝋燭の火が消えてしまわないよう気をつけたり、蝋燭が燃え尽きないように予備の蝋燭を準備し気をつけたり、また、車で迎えに行く時には裸火を車内に入れるのでことのほか気を遣ったものである。LEDならそれらの心配がなくなるのだが、そのままでは冷たい明かりに感じられてしまう。
 そこで一工夫。LEDの色を白ではなく蝋燭に近い色にする。電球色というLEDがある。5mmφの砲弾型を使ってみたが複数でないと明るさが不足する。だが複数のLEDを灯すと、提灯の外からもいくつもの光源として見えてしまう。広拡散の高輝度LEDを使うことにする。「ゆらぎ」も大事である。蝋燭の炎がゆらゆらと揺れ、光と影が動くところに自然の息づかいが感じられる。明るく点灯するだけでは物足りないのだ。
 秋月電子通商で「キャンドルIC」というものを見つけた。電流を制御してLEDにゆらぎをさせることができるものだ。ICだけではLEDへの電流が足りないようなのでデジタルトランジスタを入れて対応する。電球色LEDは1Wのものを使う。念のため放熱板を取り付ける。単3電池2本を納めるスイッチ付きケースで動作させる。
 簡単な工作なのだが、蝋燭の明るさとゆらぎを再現することができた。スイッチ一つで点灯できるうえ、火を使わないので安全に持ち運ぶことができ、風で吹き消されることもない。
 時代とともにやり方は変化していくと思う。工夫を加えながら、祖先から受け継がれてきた気持ちを大切にし続けていきたいものである。

夏みかん

三ヶ日の夏みかんとレモン

 浜名湖の周りを巡ってきた。通過するだけでなかなか立ち寄る機会がなかったところである。舘山寺に詣で、汽水湖の香りを嗅いできた。チャートが露岩しているところできれいな茶色の石を拾った。
東海道に面している地域だが、近くに東海道脇往還姫街道というところがある。西気賀駅の近くに「気賀関所」の跡が残されている。内容的には箱根など他の関所と似ているように思えた。
 その隣に、農産物販売所があった。朝から地域の方がたくさん買い物に訪れていた。素朴な品揃えで、地域で出来たものをそのまま並べている雰囲気である。ミカンで有名な三ヶ日がすぐ近くなので柑橘類が多く並んでいる。見て回っていると、中年の方から声をかけられた。「これを毎日ジュースで飲んでいる。酸っぱいけれど美味しいよ」とのこと。夏みかんである。ごつごつした肌で、日に焼けたような斑もあり、見てくれはよくないが新鮮そうである。その隣には大きさの不揃いなレモンもある。庭先に実ったものを出荷したような雰囲気が感じられる。
 素朴さに惹かれて、その夏みかんとレモンを購入して帰京した。夏みかんは懐かしい味である。まだ甘夏が現れる前、この夏みかんに砂糖をつけて食べていた。子供の頃の記憶には強烈な酸っぱさしか残っていない。しかし、今ではこの酸っぱさがおいしい。そのまま食べるよりも、サラダに加えて、ドレッシング代わりに味わう。ヨーグルトの乗せて蜂蜜をかけていただく。マイルドな味になれているなかで、この酸っぱさはちょうどよい刺激になる。
 レモンは香りはあまり強くないが、爽やかな酸味はフライや焼き魚にかけるのに、最適である。冷えた水に落としてフレーバーウォーターにしても美味しかった。料理の添え物としていろいろな場面で活躍してくれた。
 地のものに出会えるのは旅の楽しみである。観光用に用意されたものではない地域の人たちの生活の中にある何気ないものに出会う、そこからその地域の特色を垣間見ることができる。駆け足ではあったが楽しい旅であった。

電信の略号による運用

赤城山のレンゲツツジ

 アンテナを製作したので、そのテストをかねて赤城山の小沼で移動運用をした。
 電信での交信は通常、略号を使って行われる。”CQ CQ CQ DE JA1XRQ/1 JCC1601 LA2 PSE K”という具合である。略号を知らないと何を言っているのか不明だと思う。「どなたか聞いていませんか。こちらはJA1XRQというもので、移動局です。移動先は群馬県前橋市で赤城小沼の近くです。応答をお待ちします。」と言う内容である。
 電信という情報量の少ない通信方法で、豊富な内容を伝えることが出来るように工夫したものが略号である。CQは諸説あるのだが、Come Quickの略で応答を呼びかける略号。DEは「こちらは」という意味。コールサインは免許と共に指定される。/1は国内を10のエリアに分割してあり、その中で1エリア内の移動局であることを示している。JCCは国内の市などに番号を付け、JCGは郡などの識別番号である。LAは湖沼の番号で全国の主な湖沼に番号が付けられている。
 駐車場の片隅にアンテナを張り、CQを呼びかけたが全く応答がない。うまく電波は出ていないのかと心配になり周波数を動かした。アマチュア無線では使える周波数が厳密に決まられており、一定の範囲内でのみ運用が許されている。幅があるので「バンド」と呼ばれている。その7MHzバンドでの運用だが電信は下の方の周波数を使うことがJARL(日本アマチュア無線連盟)のバンドプランで示されている。周波数を動かし探っていくと移動局の強力な電波が見つかった。早速呼びかけると返答がある。”TU GM UR 599 CU GL"と電信で送って交信が出来た。内容はTUがThank Youの略、GMはGood Morningの略、URはYourの略、599は信号の強さ・了解度・音質の状況を示す数字、CUはSee Youの略、GLはGood Luckの略である。「ありがとうございます。おはようございます。あなたの信号はとても強くわかりやすいきれいな信号です。またお会いしましょう。御活躍ください。」という内容が13文字の電信に込められている。
 電波は出ているようである。相手に呼びかけることで栃木、茨城、静岡の移動局と交信をすることが出来た。電池2本の電源で2Wほどの小電力ではCQは届いていないのかも知れない。ともかくアンテナが機能することは確認できた。
 赤城山レンゲツツジの群落が広がっている。高原の爽やかな空気の中で、小鳥たちと五月蠅いくらいの虫?の声を聞きながらのんびりと無線を楽しむことができた。
 昼を過ぎると急に冷たい風が吹き出したので、天候が急変すると怖いので早々に撤収した。