XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

(tr)uSDX

アクリル板でケースを作った

 QCXはHans Summerさんが教育用にデザインしたキットで、工作が容易で実用になる性能を備えたモノバンドトランシーバーである。その後継機種でケースも一緒に頒布され、より小さくなったのがQCXminiだ。このminiキットを組み立てると一つ基板が残ってしまった。よくよく調べてみると、それはこの機種を改造してSSBも運用できるようにするための追加基板だった。
 QCXは数値演算方式という、マイコンによって回路を簡略化する構成であったので、プログラムを改造することでSSBなどの他のモードにも対応させることが可能だったのだ。これはuSDXと呼ばれ、さまざまな試みがフォーラムで盛んに議論されていた。いろいろな国の人々がフォーラムに参加し、幾つもの製作例が公表されていった。回路やプログラムがオープンソースとなっていたので多くのアイディアが集まった。基板のデータも公表されていたので、誰でも製作することができた。しかし、実際に自分だけのたった一つを作るために基板を発注するのは大きな壁であった。
 そのような中で DL2MANさんとPE1NNZさんから(tr)uSDXというキットが頒布されることになり、組み立て済みのモノも販売された。5バンド仕様で80m、60m、40m、30m、20mバンドをカバーしていた。私もこのキットを入手し組み立てたのだが、いじっているうちにRF基板を壊してしまった。どうしたものかと考えあぐねていたとき、RFボードのハイバンド版とクラシック版が頒布されたことを知り、さっそくクラシック版を入手した。これは80m、40m、20m、 15m、10mバンドのモノである。基板は同じなのだがローパスフィルターの定数が異なっている。
 プログラムにはそれぞれのバージョンが組み込まれていてメニュー8.7 Band Configからクラッシクバージョンを選択することができた。また、基板には終段Trが実装されていて、リレーとコイルそして接続端子をハンダ付けするだけで組み上げることができた。 メニュー1.4からバンド選択すると80m、60m、40m、30m、20m、18m、15m、12m、10mの9バンドを選択することができた。ローパスフィルターは5バンド分しか実装していないのにである。試しにそれぞれのバンドで送信出力を測ってみた。リチウム電池3本でおおむね12Vの電源をつないだ。(スプリアスについては測定していない)
  80m : 2.7W        60m : 1.2W        40m : 2.7W
  30m : 1.7W        20m : 3.2W        17m : 2.2W
  15m : 1.6W        12m : 1.6W        10m : 1.9W
と言う結果だった。受信はそれぞれできているようだった。(エンコーダー2回クリックのバンド選択ではLPFを取り付けている5バンドを循環する)

 後日、DL2MANさんがYoutubeでクローンが出たという動画を出していた。ネットでは本家と並んで販売されていた。ケースが黒である他は外見は全く同じに見える。アップグレードで8バンド仕様だそうだ。だが、このアップグレードバージョンはDL2MANさんの知らないうちに出されたモノだという。

 私はCWしか出ないのでこの機種をA1A限定で認証を得て設備の仲間入りをさせた。メーカー製のトランシーバーとは比べようもないが、このリグは掌に載るような小ささで、マルチバンドで、そこそこの性能で交信することができる。ハイバンドが開けてくればもっと移動運用で活躍する機会が増えてくるだろう。