Go Bag、時には Go Boxと呼ばれることがある。非常用持ち出し袋(箱)とでもいう意味であろうか。必要な機材を一つにまとめ、すぐに持ち出せるようにしたものである。
アマチュア無線はさまざまな機材を使って、電波を出し通信を行う。そのシステムを構成するもののうち一つでも欠けると運用をすることができない。移動運用で、コード一つ、コネクタ一つを忘れたことで、運用をあきらめるということはよくあることだ。運用に必要な最小限のものを一つにまとめておけば、とりあえず電波を出し、交信をすることができる。そのような目的でGo Bagを構成してみることにした。
通常、部屋の中から運用する場合には無線機をはじめ、アンテナシステムなど全体の機器が接続されていて、リグのスイッチを入れれば受信機から信号が聞こえてきて、打鍵すれば交信を始められる。野外で運用する場合には、それらすべてを持ち出さなければならない。無線機・電源・アンテナ・電鍵・イヤーフォーンなどだが、アンテナを現地の状況に応じて整合を取るチューナーも必要である。アンテナを伸展するためにはポールがあるといい。また、運用記録を取るためのログブック、無線局免許状も必要である。
これらをいかにコンパクトにまとめるかが課題となる。Go Boxのような車での搬送を行う場合には大きな電力の機器が使えるが、徒歩で移動する場合を想定する。そうなるとQRP(小電力)での運用である。QRPであれば大きな電源も不要で、手軽な電池で賄うことができる。アンテナは嵩張るものだが、ワイヤーアンテナとする。効率は落ちるものの複数のバンドで使用可能なランダム長アンテナを使う。電鍵はリグ内蔵のエレキーを使うこととし、自作のパドルを用意する。アンテナポールは強度の得るためグラスファイバーの釣竿の先端部の細い部分を取り除いたものを用意した。
これらを収めるケースとして、16cm×12cm×7cmほどのものを用意した。掌に載るコンパクトなものだが、どうにかこの中に収めることができ、このケースとアンテナポールを持ち出せば運用できる状態になった。
この2つを持ち出して、庭先で運用してみた。アンテナエレメントの先端を庭木の枝に結び、ポールを経由してチューナーに接続した。チューナーとリグは同軸ケーブルを使わず直結である。アンテナの整合を取ると信号が聞こえてくる。呼びかけをして交信した。山口県熊毛郡と北海道帯広市の局と繋がった。最小限の装備でとりあえず運用できることを確認した。
ネットを彷徨っているとこうした非常持ち出し袋に類する記事がたくさん見出せる。常に災害が身近にあるという不安感なのだろうか。モノがたくさん溢れる現状の中で、何が本当に必要なのかを見定めるこうした取り組みも意味のあることなのだろうと思う。
さて、花粉が少し収まってきたら、このGo Bagを持って、近くの公園にでも散歩に行ってみることにしよう。