XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

サヴィニャック

サヴィニャック 展

 練馬区立美術館で開催されているサヴィニャックのポスター展に行ってきた。「パリにかけたポスターの魔法」というサブタイトルが付けられた展覧会である。サヴィニャックという名前にはなじみがなかったのだが、その作品は目にしたことがある、どこか懐かしさを感じるポスターである。
 1949年に、すでに40歳を過ぎてからのデビューと言うことだから遅咲きのようである。活躍したのは1950年代から60年代にかけてということで、ルノーシトロエンダンロップミシュランBICなど私が子どもの頃から良く目にした会社のポスターを手がけてきたようだ。
展覧会場に入ってまず目に付くのがその鮮やかな色彩と、簡略化された造形である。一目見て何を訴えようとしているのかがわかる。一番最初の作品という「牛乳石鹸モンサヴォン」は大きなウシと、そこから出ている牛乳、そしてそれが石鹸になっている。余計な説明がなくても「牛乳石鹸」が自然と頭に入ってくる。
 展覧会の構成は大きなポスターがあり、その原画が並べられている。会場ではサヴィニャック自身が作品を制作している様子を映像で見ることができた。構図を単純化し、色彩を選び、ポスターの依頼主から要望された文言をどのように配置したらよいかなど、ポスター制作の過程を見ることができた。そうして原画が出来上がると、ポスターとして仕上げるために、次の人に渡すのだと語っていた。確かに、展示されている原画とポスターはとてもよく似ているのだが、微妙な違いもある。商業美術としての成り立ちも興味深い。
 マツダや森永、サントリーなど日本の企業から依頼されたポスターも展示されていたが、あまり記憶には残っていなかった。サブタイトルにあるように「パリ」の街という情景の中でこそ生きてくるポスターなのかも知れない。それでも。さまざまな作品を見ているうちに、気持ちが穏やかになってくるのを感じる。単純であり明快であることから感じる安らぎなのかも知れない。
 桜が開花し、寒さから解放されたような一日、美術館散策もいいものである。