XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

相対主義と多様性

shig552006-08-14

今日は朝から停電で大騒ぎ。停電の時刻には職場に入っていたので、直接の被害はなかったが、「電車が止まっている」「停電でオフィスの機能がダウン」「信号が停止で大渋滞」と立て続けに情報が入ってくる。旧江戸川を上っていたクレーン船が高圧送電線に接触したのが原因とのこと。約3時間で復旧したが、外国での事例を考えると比較的短時間で回復したように思う。近い将来起こるであろう大震災の復旧訓練でもあったように感じた。

先日、久しぶりにドライブをした。カーナビを活用して移動したが、高速に乗ってすぐに降りる指示が出されてしまった。お盆で高速道はどこも渋滞。入り口付近は動いていたが、次のインターから先はすごい渋滞になっているようだ。ナビの指示通りに一般道を行くことにする。

ところで、もし、ほとんどの車が同じようなナビやVICSを装備していたとすると、渋滞情報が出た段階で一斉に回避道路を指示されることになる。そして、その指示通りに動いたとすると、また、渋滞が起きてしまう。指示案内に従うことで多くの車が同じように行動するからだ。現段階ではナビもあまり普及していないし、一台一台の車がそれぞれの判断で進路を変え、分散することで渋滞回避が出来ているが、統一した指示で行動するようになったら、渋滞が助長されてしまうだろう。

物事の判断には絶対ということはない。それぞれが与えられた条件の中で判断し、最善のことを選んでいく。相対主義である。絶対真理というわけではないから、さまざまな判断が混在する。当然その中には誤りもあり、非効率もあり、回り道もある。不確実で多様である。しかし、それぞれの判断は常にその状況からフィードバックされ修正されていく。だから、大きな誤りにならずに済む。

この相対主義的な行き方は予定調和の楽観的な考え方かもしれないが、「絶対これが正しい」「神の教えはこれである」と有無を言わさず方向付けるより、人間の英知が生かされるやり方のように思う。

「馬鹿であることの権利を保証せよ」という訴えがある国際会議で出されたという。高学歴のエリートが国家天下を大上段に論じていて「人類はこうでなくてはならない」という方向で結論づけられようとしていたときだ。
さまざまな能力、英知を持っている人間を一つの視点で決めつけてしまいことの恐ろしさ。「国のため、世界のため」と叫ぶ人の考えの中に、どの程度の幅を持った人間像が描かれているのか。

カーナビは便利である。しかし、一台一台がそれぞれの判断でルート検索、渋滞回避の方法をもてるようになるまでにはあと何年くらいかかるだろう。