XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

キットの製作

周波数カウンターキット

 ものづくりは最初の設計段階から、テスト回路で動作を確認しながら回路を変更し、実機の製作へと進んでいくのは楽しい。しかし、その労力は並大抵のものではない。ものを作り、完成させるおもしろさを味わうという手軽なものではない。
 そんな本格的なものづくりではなく、手軽に楽しむためにはキットを活用することが多い。回路は吟味されているし、部品を集めなくてもよい。製作手順まで示されている。困難なことはすべてキットメーカーの方でお膳立てしてくれている。
 しかし、キットメーカーにすると、販売しても製作者の技量によってさまざまなトラブルが持ち込まれ、品物を販売する以上に、その対応に経費がかかるのが実情のようである。そのような事情からか、国内では多くのキットメーカーが手を引いてしまい、なかなか楽しめるキットを手に入れることが難しくなった。

 現状でキットを手に入れようとすると、海外から購入することが多くなっている。今回入手したのは周波数カウンターで、ネットで注文し2週間ほどで送られてきた。価格は送料込みで900円ほど。為替レートによって日々変動するが、大変に安価である。仕様は1Hz〜50Mhz、30vまで測定可能。5桁表示でオートレンジ。また、表示は加算や減算がプログラムでき、オートパワーオフ機能も付いている。USB電源でも使え12Vまでの広い電源に対応しているという。また、水晶発振子の発信周波数を測定することもできる回路が組み込まれている。結構使えそうな仕様である。
 届いたキットをさっそく組み立てた。送られてきたものは部品と基板、ケースになるアクリルプレート、そして説明書が1枚。販売先から多少詳しい英文の説明書がダウンロードできるが、初心者には難しい構成である。
 1時間ほどで組み上がり、所定の動作をしてくれた。水晶発振子の周波数を確認できる機能は便利である。
 動作から、この回路で使われているPICのプログラムは、ネットで公開されているDL4YHF Wolfgangさんのものに近いと推測されるが、これだけのキットが千円以下で入手できるのは驚きである。情報提供を最小限にし、製作に関しては製作者に任せ、キットを提供することだけに限定しなければこの価格は維持できないと思う。

 ものづくりは自分の技量を高めていくことも楽しみである。製作していて疑問やわからないこと失敗など、さまざまな壁にぶつかりながら一歩一歩前に進む楽しみ。キットの中にはどの程度の難易度であるかが表示されているものもある。「わからないから誰かに聞く」ということも大事だが、自分で試行錯誤していくことも大事だと思う。良質なキットがもっともっと提供されて、それぞれのレベルにあったものづくりが楽しめるようになってほしいものである。
 つくる楽しみの後、ものがどんどん増えてしまうのは困ったことである。また一つ増えてしまった測定器。お蔵入りにならず使えるかなぁ・・・

モールス体験

shig552017-09-05

 大きなイベントがあり、「モールス体験コーナー」というところの手伝いをした。幼児から大ベテランまで多くの方が来場してくださり、電鍵を触って「電信とはこういうものか」と体験してもらった。
 高校生くらいの子から「電信ってどんなところで使っていたのですか」と質問を受けた。昔、電話が普及していなかったころ、遠く離れた人に急用を知らせるには電報しかなくて、その電報を送るのに使っていたと説明すると、「電報ってなんですか」「映画の中で見たように思うのですが」との反応。電報も過去のものになっていることを改めて認識した。一人ひとりが通信機器を持つ時代になり、「モールス通信というものが、かって使われていた」と記録に残される時代になってきている。
 来場された方で「免許は持っている」「モールスは知っている」、でも「CWを運用したことはない」という方が何人もいた。知識としてモールス符号を知っていても、使うことができないようで、実際、電鍵を操作しても符号として認識できていない場合が多かった。無線従事者の国家試験では「モールス符号の理解」という扱いになり、実際に使用することなく免許が取れる状況を反映しているのかも知れない。
 
 「モールス符号ユネスコ無形文化遺産へ」と言うことは、本に書かれた記録として残すことではないと思う。”モールスを使って通信する”ということを伝承していくことだと考える。
 来場した子どもたちにも電鍵で遊んでもらった。モールス解読器をセットし、打鍵した符号を解読し液晶画面に表示するようにした。子どもたちに符号を音で聞いてもらい、それが文字として表示された後、「今のと同じようにできるかな?」とし向けると、何回か試すうちに符号が表示された。CATとかDOGという文字が表示されると、大喜びである。耳で聞いて、それを真似ることで符号になっていた。
 しかし、「免許はもっている、符号も知っている」という人が打鍵すると、EとTの羅列になることが多かった。短点と長点の組み合わせとして符号をわかっていても、短点と長点の間のスペースを含めた一文字としてまとめることができない。また、文字と文字の間が空いてしまい、語としてもまとまりを作れない。
 耳で聞いていると、何となくわかってしまう符号でも解読器を通すことで厳密に長・短点の長さ、長点と短点の間隔、文字と文字、語と語の間もはっきりと見ることができる。
EとTの羅列であった人も、何度も音でその符号を聞いてもらうようにすると、徐々に解読器に文字が表示されるようになってきた。知っていることと、使えることの間には大きな壁がある。この壁を乗り越える最初の一歩が難しいのだと思う。
 ”CWデビューしませんか”と呼びかけているのだが、最初の一歩に躊躇している人が多いようだ。特別局や移動局に呼びかけて599の交換から始めるのも在りかと思う。スケジュールQSOという手もある。モールス符号を残すのではなく、”モールス通信”を継承していくようさまざまな取り組みが必要なのである。

 老若男女、さまざまな人がモールス体験コーナーを覗いてくれた。電信の楽しさをもっともっと広めることを続けていきたい。

使い勝手の改良

改良したMLA

 この写真からは、何なのかわからないと思う。RCAジャックとSW-40に組み込まれたポリバリコン、そして配線カバー2本が写っている。実は配線カバーの中に、エレメントのワイヤーが収納されている。
 これまでいろいろとMLA(Magnetic Loop Antenna)を作ってきた。実際に使ってみて少しずつ改良してきたところだ。QRPで使用するならば、キャパシターに高耐圧のものを使用しなくても、トリマーや通常のコンデンサーでもどうにか使用できることがわかった。形状が安定していれば、周囲の影響を比較的受けにくく、毎回、調整をしなくてもおおむね使うことができるようだが、キャパシターの整合は大変にクリチカルで、ちょっとした変化で同調点が動いてしまい、その幅は極端に狭いことがこのアンテナの特徴である。
 そこで、ワイヤーを配線カバーに沿わして形状の安定を図り、キャパシターにはトリマーと固定コンデンサーを抱き合わせで、同調を取るようにした。そして複数のバンドで使用できるよう、キャパシターをスイッチで切り替える構成のものを作ってきた。
 調整については、アンテナアナライザーを使い、SWRとインピーダンスのグラフを参考にしながら、同調点を求めてきた。
 直径1mほどの小さなアンテナでも、効率はそれほど良くはないが、そこそこ電波が飛んでくれ、実際の使用ができることを実験してきた。

 その実験の過程で、いくつか改善点が浮かび上がってきた。
 ? トリマーの使用の件だが、小型軽量で基板に組み込んで使えるのだが、調整には、専用の道具”調整棒”を使わなくてはならず、細かな調整に手間取ることが多くあった。予め調整をして移動先にもっていくのだが、やはり不安になり、整合が取れているかいじることが多かった。一度動かしてしまうと、なかなか整合点が見つからず難儀した。
 これをポリバリコンに変更した。スイッチによりバンドを切り替えるのではなく、ポリバリコンで調整する方式だ。実際に使用してみると、ポリバリコンを動かすことで、容易に受信音のピークが見つかる。その位置がアンテナの整合が取れている点だった。アンテナアナライザーで確認してみると、ポリバリコンに触れる手の影響が多少出ているが、おおむね、受信状態でノイズが最大になるよう調整すれば、アンテナの整合が取れることがわかった。
 ポリバリコンにダイヤルを付け、調整位置がわかるようにしておくと、バンド毎に調整するのに便利だった。トリマーに比べてポリバリコンの方が操作性が格段に良くなる。
 ? 配線カバーは携帯性を考慮し、できるだけ短くするようにしてきた。しかし、1本を短くすると、継ぎ足さなければならない数が増えてしまう。組み立てにも手間取ることになる。そこで、市販されている1mの配線カバーをそのまま使うことにした。エレメントを3mとし、ポリバリコンはAM用の260pFのものを使用する。FT37-43のトロイドにエレメント線を貫通させ、リンク線を7回巻いてTRCVからの入力とした。この部分のコネクターにはRCAジャックを使った。BNCへの変換コネクターを使えば、通常の同軸ケーブルも使える。
 使用時は、配線カバーの蓋と身2本ずつを組み合わせて、輪を作り、エレメントを沿わせる。真ん中にポールを添えてやれば、形状も安定する。
 そして、収納時にはエレメントを配線カバーの中に入れてしまえば、すっきりと収まる。

 携帯時には全長1mの棒状のものになるが、車のトランクに入れても嵩張らない。このMLAで40mと30m、20mで充分整合が取れることを確かめた。また、エレメント長を2m弱とした、直径60cmのものでは40,30,20,17,15mで使えそうだ。実験をしながら、少しずつ改良していくのは楽しいものである。

カシワバアジサイ

カシワバアジサイ 4態

カシワバアジサイ
 古来より日本にある花木のようだが、最近多く見かけるようになった。我が家にも数年前に鉢植えでやってきて、今では地植になり大きく成長している。
 名前のように柏の葉に似た形の切れ込みがある葉で、5月頃になると真っ白な花をボリュームたっぷりに咲かせて、目を楽しませてくれる。よく見かける色鮮やかな西洋アジサイや清楚なガクアジサイとはひと味違った美しさである。
 一重と八重のものがあるようだが、我が家のは幾層にも白い花弁のようなものが重なった八重咲きである。アジサイは花弁のように見える部分は装飾花で、おしべやめしべが退化しガクや花弁が変化したものだそうだ。
 この花はひと月以上も長く楽しむことができる。そして少しずつ変化していくのがおもしろい。咲き始めた頃は輝くような白さで瑞々しい緑の部分が真ん中にあり、とても清楚である。
 しばらくすると徐々に白さが失われ、緑が増してくる。そして、淡い茶色を帯びた部分が装飾花の周囲に見え始める。透き通るように柔らかかった花びらが少し厚みを帯びてきたようにも見える。
 さらに時が経過すると、花穂全体がたくましさを増してくるように、白い色が失われ緑や薄い茶色が広がって、可憐な姿ではなくなってくる。しかし、色のグラデーションが絶妙で見とれてしまう。
 終盤、水を吸い上げることもなくなった花穂はドライフラワーになっていく。色はすっかりミルクチョコレートになってしまうが、装飾花の形は保ったままである。造形として楽しませてくれる。ドライフラワーになってしまうと時が止まり、いつまでも楽しむことができるのだが、こうなるまでさまざまな表情を見せてくれるのが、このカシワバアジサイである。
 最初は白い清楚な、それでいて豪華な白い花の塊に魅せられていたのだが、その変化に気づくと、それぞれの場面で、そのときどきの美しさを見せてくれることに感動した。

 自然界には、まだまだ見えていない、気づかないことが多くありそうである。

クリップ・パドル

Clip Paddle

 梅雨に入ったとの報道があったのだが、梅雨前線はこのところ南の海上に下がったままで梅雨らしい天気になっていない。しとしと降る雨は情緒を感じながらも、鬱陶しさも感じるものである。雨が降らないのは嬉しい面もあるが、この雨で田植えができ、夏に備えての貯水量を確保するという面を考えると、雨が降らないと喜んでばかりはいられない。昔ながらの季節の移り変わりを味わいたいものである。

 移動運用をする時、荷物はできるだけ少なく、コンパクトなものが望ましい。私は電信での運用しかしないので、電鍵かパドルを持っていくのだが、それらはしっかりと動かないように固定しないと使いづらい。小さなパドルでは左手でパドルを保持し、右手で操作することになる。両手が符号を送り出す操作に使われてしまうので、記録を取ったりリグを操作したりを同時に行うことができない。パドルを右手だけで操作できるようにすれば左手を解放することができる。
 そこで、普段使っているマイクロスイッチを活用したミニパドルを固定する方法を考えた。これまで基台にマグネットを使い、鉄などに吸い付くようにしたこともあったが、まだ不安定であった。そこでクリップを使うことを考えついた。パドルは小さく、大きな力が加わるものではないので、ボードなどにクリップを深く挟めば、実用的な安定を得られるはずである。
 さっそく手持ちの部品などを探して作り上げたのが写真のクリップパドルである。クリップを大きくするほど安定が増すのだが、パドルがとても小さいので、それとのバランスでこの目玉クリップを使っている。見てくれをよくするためにローレットビスを使ってパドルとクリップを結合している。この大きさのクリップで6mmほどのボードを挟むことができ、パドルの操作では左手を添えなくても大丈夫な位の安定感は確保できた。
 お空もやっとハイバンドでも開けるようになってきた。野外での運用が楽しめる季節である。より快適に、より簡便に、より効率的に運用ができるよう、あれこれと工夫していくのも楽しい。そして実際に運用しながら改善していく。アマチュア無線の楽しさは、もの作りの楽しさと相まっているように思えるのだ。
 さて、次の野外運用はどこに行こうか。
製作記事

SOTA移動用MLA

MTR4B & MLA2B

 組み立て式でコンパクトに収納できるMLAを作った。
 配線カバーを使ってMLAの輪を作っていたのだが、主に身の部分で輪を作り、結合に蓋の部分を使っていた。そのため、蓋の部分が結構余っていたのだ。これを活用することにした。配線カバーは長さが100cmで、蓋の外形で幅が13.5mmと16.5mmの2種類を使っていた。この2種類の蓋を合わせるとちょうど重ね合わせることができた。

 13.5mm幅の蓋2本と16.5mm幅の1本を使う。
13.5mmの蓋を40cm、30cm2本に切り分ける。(全部で40cm2本、30cm4本)
16.5mmの蓋を20cm2本、15cm4本に切り分ける。
16.5mmの蓋で20cmのものは給電部とキャパシター部の支持になる。
1.5mmの蓋で15cmのものは13.5mm、30cmと5cmを重ね合わせて接着する。全体の長さとしては40cmになる。(合計4本)

 エレメントになるワイヤーは2本平行になった電源用導線を102cm用意し、2本を切り離して使う。双方をつなぎ合わせてはんだ付けし、熱収縮カバーを被せておく。この部分をトロイドコアの中を通して、給電部とする。また、両端はキャパシター部と接続してリング状にする。
 配線カバーの長さが100cm2本分なので円周200cmになる。その中にエレメントを収納するが、エレメントをキャパシター部を含めて200cmより多少長めにすることで、収納作業をやり易くしている。蓋の結合部に使った組み合わせ部分を広げることで、ワイヤーをしっかりと配線カバーの中に収めることができるからだ。

 配線カバーを組み合わせ、エレメントを収納したら、結合部の重ね合わせ部分にインシュロックを取り付ける。スライドできる程度に締め付けておく。こうすることで結合部が外れることがなくなり、収納するときにはこれをスライドすれば容易に分解できる。また、40cmのカバー以外のパーツがエレメントワイヤーで繋がれたことになるので、組み立て手順が分かりやすくなり、紛失防止にもなるだろう。

 組み上げた後、アンテナアナライザーなどを使って使用する周波数で整合するようにキャパシターの調整を行う。非常にクリチカルで、何度も繰り返す必要があると思う。一度調整しておけば、アンテナの形状を同じようにすればあまり大きく性能が変わることがないので、移動先で再調整する必要はないようだ。

 できるだけ荷物を少なくして移動運用をする装備を考えてきました。電池を内蔵したMTR4Bとこのアンテナを直結すれば、同軸ケーブルも必要なくなり、とてもコンパクトな装備になりそうです。
製作記事

Simple SWR

Simple SWR

 緑が濃くなり、小さなサクランボを付けた並木の道を歩いていた時、キジバトに出合った。最近、キジバトは数を増やしているようでいろいろなところで見かけるのだが、この鳩には見覚えがあった。頭のてっぺんの羽根が立っているのだ。まだ幼鳥なのかも知れないが特徴のある顔である。我が家の庭で仏壇のお下がりのご飯を撒くと、どこからともなくやってくる鳩である。きょとんとした目でこちらを見ているが、鳩の表情はわからない。カラスは個人を識別するというが、鳩にはその能力はあるのだろうか。
 
 ワイヤーMLAの実験を続けている。同調点がシビヤなので苦労している。調整にグラフ表示のアナライザーを使うと分かり易いのだが、結構、重量がある。もっと軽量でコンパクトなもので表示できないかと考えていた。
 そこで試したのがSWR計をシンプル表示にすることである。QRP仕様とし、使う周波数帯に限定すること、また、大きなメーターではなくLEDやラジケーターという簡易メーターを使う方法である。
 表示器の入出力を直結とし、そのラインをピックアップのためのトロイドコアの穴に通し、コアに巻いたコイルから進行波(FWD)と反射波(REV)のデーターを取ることにする。この回路をアンテナ回路に挿入することで、多少の減衰は生ずるだろうが、目を瞑ることとする。運用時にもアンテナ回路のSWR状態を監視する機器である。
 まず、LEDを表示器として作ってみた。REVが消灯し、FWDが明るく点灯するよう調整することはできるが、REVの消灯範囲が結構広い。どこが最良点なのか見極めるのが難しかった。
 次に試したのがREVの電流をラジケーターで表示する方法である。LEDを点灯させる電流よりも小さな電流で動作するメーターである。全く振れなくなるようにすることはなかなか難しい。つまりMLAのキャパシター調整が微妙に出来るのだ。キャパシターの増減を何度もやりながらメーターが振れなくなる点を見出すことができた。LEDよりも使いやすいと感じた。
 ラジケーター表示の感度がよい分、大きな電流を流しすぎないよう注意が必要である。受信状態でMLAのキャパシターを調整し、雑音が一番大きくなりように調整しておくとREVの電流も小さくなっているはずである。そこからさらに最良点に追い込んでいくためにこの機器を使うようにする。
 EFHWなら20mから9mの長さが必要なのに、MLAでは直径70cmほどの輪に電波を乗せて送り出すことができる。放射効率ということではあまり電波の飛びを期待することは出来ないが、MLAの利点はコンパクトで、ワイヤーアンテナに比べて周囲の影響を受けにくいことである。予め調整して車に乗せておき、現地でそのまま吊せば、即、運用可能だ。その際の微調整の補助具として、この機器を活用したい。