XRQ技研業務日誌

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コミュ力は「副詞」で決まる

言葉を見直すのもおもしろい

コミュ力は「副詞」で決まる
                石黒 圭  光文社新書  2023.4.30

 文法を学んだのははるか昔になってしまった。「こくご」でも習っていたはずだが、あまり記憶に残っていない。外国語を学ぶ際にSVOや品詞、構文など面倒だった印象がある。古文や漢文でもそのようなことはあったのだろうが曖昧だ。
 この本の題名はインパクトが強かった。副詞というあまり聞きなれない言葉がコミュニケーションでは重要だというのだ。そこに惹かれて手に取った一冊である。
 国立国語研究所教授である著者は文章表現などの技術的なことを分かりやすく平易に書いているのだが、第1章「副詞とは何か」の書き出しは「副詞ってやっぱり難しい?」であり、次に「マイナーでわけのわからない副詞」と続いていく。そして「品詞のゴミ箱」となり名詞や動詞、形容詞、形容動詞、接続詞、助詞等々の品詞に分類されないものが副詞となっていると定義について触れていく。そして副詞をその役割などから分類し、その分類表に沿って解説がおこなわれる。読み始めは授業を受けているような堅苦しさを感じていたのだが、読み進めるうちに副詞がさまざまな役割をしていることがわかり、日常の言語活動と結びついてずんずんと引き込まれていった。

 日本語はSOV(主語・目的語・動詞)が基本で言語としての根幹はこれで役目を果たせるのだが、そこに副詞が加わることで描写性、程度性、予告性、評価性、期待性などを加えることができ、感情や配慮などさまざまな微妙なニュアンスを伝えることに役立っているという。逆に言えば、論理性が必須な論文などでは極力副詞の使用を避け曖昧さを避けることが指導されているのだという。

 分類された副詞ごとにその用法を例示しながら解説されているが、普段何気なく使っていた言葉がどのような役割をしていたかに気づくことができおもしろかった。特に、同じような意味合いを持つ副詞でもそれぞれが微妙な違いを持っていてそれらを使い分けることでより表現が的確になっていくこと、そして話し言葉と書き言葉の違いや世代による副詞の使い分けなど興味深い内容である。
 英語などのSVO構文に対して日本語のSOV構文の弱点が、話の冒頭に「幸いなことに」とか「要するに」などの副詞を置くことで言おうとしていることを的確に伝える役割をしているという指摘はなるほどと納得である。
 『副詞の重要な役割が「話し手のの気持ちを伝えるところ」であり、どのような副詞を使うかによって話し手の背後にある人間性や、話し手が隠していたかったはずの本音まで、聞き手に自然に伝えてしまう』とまとめられているのは、副詞についてなんとなく分かった気がしたところだ。
 文を書くとき言葉選びは常に頭を悩ましている。自分の考えていることを表現するにはどのような副詞をどの位置でどの順番でどの位繰り返して使うか、文の構成と共に難しい。コミュニケーションは相手に伝わってナンボで、平易な文章を書くのには修行が大事だと再認識した一冊である。