電鍵やパドルで交信をしていると、その使い心地が気になってくる。スイッチの断続でモールス符号を生成しているだけなのだが、手に馴染み、思い通りの発信ができる時と何か違和感があり符号の乱れが生ずる時がある。
電鍵やパドルは機構的には単純なスイッチで、操作に従ってONになればよいのだが、レバーを押したとき接点が閉じるまでの時間、つまり接点のギャップは重要である。ガツンガツンと広めのギャップを好む人もあれば、指を軽く触れただけで動作するような極小のギャップを好む人もいる。
テンションの硬さの影響も大きい。レバーを押したときの反発の強さだ。コイルばねやマグネット、素材の弾性を使ったものなどさまざまな方式があり、微妙に感覚が異なる。強さを調整できるような機構を備えたものも多い。
また、竿やレバーと呼ばれる部分の剛性も使い心地に関わってくる。太い金属で作られたものは接点と一体化しているのが感じられる。この剛性が弱いと操作に心許無さが感じられる。
接点が閉じたときの感覚も重要である。接点は金属同士が触れ合うのだが、ガツンとふれあいものとソフトに受け止められるものがある。接点に使われる金属による違いであろうが、その微妙な違いが使い心地に関わてくる。
使い心地は大変に微妙であり、それを満たすためにさまざまな機構が考案されている。市販されている電鍵やパドルは精密でしっかりした機構になっており、さまざまな人が使えるよう多くの調整機能が組み込まれ、さらに美的な要素も加わっているので大変に高価なものになっている。
しかし、誰でもではなく、自分一人が使うとなれば、モールス符号をタイミング良く生成するスイッチという機能に焦点を当て、簡単な機構でも動作させることができる。自分が使い心地の良いフィーリングに作り込めばよいわけである。既製品のように万人が使えるようさまざまな調整機能を組み込む必要はない。自分が妥協できる範囲にさまざまな要素を落とし込む。そんな思いから作ったのが写真のアクリル板を使ったパドルである。
製作についてpdf
用途は移動運用などちょっとした運用をする時に気軽に使えるものとした。掌に握って使用することを前提にコンパクトにし、アクリル板の弾性を使って駆動部分とする。接点はビスとスペーサーの金属部分を接触させる構造である。こんな簡易で単純なものでと訝しがられることと思うが、使い心地はそれほど悪くない。何よりも自分の好みで長さや位置を決めて作っていけるので、調整機能がなくても問題ないのだ。そして安価に容易に取り組めるので自分好みの使い心地を追求して何台も作ることができる。
高級な機器を活用するのも一方だが、このような自分だけの機器を手作りで楽しむのもいいものである。