XRQ技研業務日誌

ものづくりを楽しんでいます。日々の暮らしの中に面白そうなものを探しながら

メイク・コレクション

メイク・コレクション

 今日は成人の日。お祝いのハレの日なのだが、朝方から雨が雪に変わり、すでに辺り一面を銀世界に変えている。爆弾低気圧が太平洋側沿岸を通過していることから、このような大雪になったようだ。
新成人の前途を祝福し、今日の景色を思い出として、色鮮やかな活躍を期待したい。

 本をいただいた。「子育ての芽を育てる愉しみ メイク「芽育」コレクション」コレクター かとうかづお と題する本である。
 加藤一夫氏は公立学校教諭から新宿区教育委員会指導主事、都教育研究所指導主事、練馬区教委育委員会指導室長、中央区立泰明小学校校長・泰明幼稚園園長などを歴任し、田柄幼稚園長や練馬区教育委員会委員を務められた方である。
 加藤一夫氏は幼児、児童の教育に長く携わっていらしたので、教育をメイク(芽育)という、人としてこれから伸びていく芽を育む愉しみという視点から「一夫一話」として書きためられたエッセーをまとめられたのだろう。この本は装丁もたいへん洒落ていて、それぞれの文が関連する漢字二文字を題としている。装丁・編集について二人の方への謝辞が書かれているので、ご家族で和気藹々とまとめられたものであろうと推察される。
随所に現在の風潮への警鐘が書かれているが、その根底には子どもたちへの温かなまなざしが感じられる。一人ひとりの子どもたちが持つ可能性を信じ、親や教師など子どもを見守る者が自分自身で考え自信を持って支援していくことが大事だと示している。

 その中の一編。「一願一叶」
 その日の給食に一人2個ずつのサクランボが付いた。給食を食べ終えるころ、5歳のサキちゃんがサクランボを大事そうに手に持ち、先生の前にやって来た。「サキちゃん、どうしたの」「先生、このサクランボ、お家へ、持って帰りたいの、いい?」「どうして」「あのね。カナちゃん(妹)が、お熱出して寝ているの。カナちゃん、サクランボ大好きなの。このサクランボ食べたら、お熱下がるの。」という会話があり、その担任は給食室に行き、サクランボをラップに包んで、手紙を添えてサキちゃんに持ち帰らせたという話を紹介している。

 日常の何気ない出来事であるが、管理一辺倒ではない、子どもの心を読み取った担任の姿を捉えた逸話である。芽育とは何かを具体的に示していると思う。事故防止のためには食材を持ち帰らせることは好ましいことではない。しかし、そのことを踏まえながらも、子どもの気持ちをくみ取り成長の糧として活かした担任の行動、また、それを見守った園長の視線の大きさと温かさを感じる一文である。
 60ものエピソードが綴られた珠玉の本である。一つ一つはとても短くまとめられているのだが、そこに書かれている事柄はたいへんに深いものでありじっくりと時間を掛けて考えるきっかけを与えてくれた本である。
 ありがとうございました。

なお、これはコレクターと称する加藤一夫氏の私家本である。